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(写真=PIXTA)

2016年2月、政府が宅地建物取引業法の改正を閣議決定したことをご存知でしょうか? その内容は、中古住宅の欠陥や不具合などを専門家が調べる「住宅診断」を促すものです。また、中古住宅の仲介業者が契約時に、売り手と買い手に住宅診断を実施するどうかを確認することを義務化するものです。

この「住宅診断」と同様に、住まいの耐久性を調べる「耐震診断」というものがあります。東日本大震災以降、その重要性はさらに増しています。そこで今回は、中古物件の住宅診断や耐震診断のポイントについて見てみることにしましょう。

住宅診断と耐震診断の違い

住宅診断(ホームインスペクション)は、建物の劣化や維持・管理状態の診断を行うものです。構造や設備、内装に関することが中心です。住宅診断では、耐震性の計算などは行いません。これに対して耐震診断は、主に旧耐震基準(後述)で建てられた建物の耐震性を診断するものです。

これを踏まえ、住宅診断と耐震診断のそれぞれでチェックされる点について確認します。

住宅診断のチェックポイント

住宅診断は、耐震診断よりも一般的な診断で、診断対象もより広範にわたります。そのチェックポイントを以下に列挙します。

【屋外】
基礎のひび割れ・鉄筋の露出、コンクリートの浮き・剥がれなど
外壁のひび割れ・浮き・剥がれ・チョーキング・隙間など
シーリング材のひび割れ・剥がれなど
屋根のひび割れ・雨漏り、雨樋の破損・著しい変色など

【室内】
壁面の仕上げの剥れ・ひび割れなど
床の割れ・めくれ・ひび割れなど
天井壁紙などの剥れ・亀裂・ひび割れなど
階段の著しい沈み・きしみ・踏み面の傾きなど
家が傾いていないか
電気が点くか、配線不良がないかなど
ドアや窓を開閉し引っかからないかなど
建具(室内ドアなど)の動作不良・反り・変形など

【床下】
束の緩み・浮き・腐食・浮き
漏水などの跡
火災などの跡
蟻害などの跡

【小屋裏・天井裏】
金物の不足や緩み・腐朽・発錆など
換気ダクトの接続不良など

【設備】
トイレ、キッチン、洗面、浴室の著しい給水量不足・床上の漏水
蛇口下配管の濡れの有無
換気設備の動作不良
給湯機器周辺の漏水、電気温水器・機器周辺の漏水
最終枡(敷地内)の著しい堆積物・内部の隙間

耐震診断で最も重要なことは「いつ建てたのか」

次に耐震診断ですが、最初に行うべきことはその物件の建築確認が「いつ行われたか」を確認することです。過去において、耐震関連の基準は大規模な災害が起こるたびに改正され強化されています。そのため、建物がいつの基準のもとに建てられているかを知ることは重要なのです。

法改正の経緯を見てみましょう。

まず、建築基準法(旧耐震基準)が制定されたのは1950年です。その後、1971年の改正では、鉄筋コンクリートのせん断補強基準を強化し、また木造建築物の基礎をコンクリートまたは鉄筋コンクリートの布基礎とすることが規定されました。そして、1981年には改正新耐震設計法が制定されました。これが現在の「新耐震基準」です。これ以前の建物か、以後の建物かは耐震診断の大きなポイントになります。

また2000年の改正では、新耐震基準の手直しのほか、家を建てる前の地盤調査が事実上義務化され、地耐力に合わせた基礎構造が規定されました。また、筋交いを土台や梁・柱に固定する金物や壁の配置バランスなど、木造住宅の耐震性向上に関する規定が盛り込まれました。このような経緯を踏まえると、建物がどの年代に建築されたかで、耐震性はだいたいに分かります。

耐震診断のチェックポイント

次に、建物の耐震性を診断するための、より具体的なチェックポイントをあげます。

・ 大きな災害に見舞われたことがあるか
これまでに火災・浸水・車の突入事故・大地震などの災害に遭遇し、それをわずかな修復だけで耐えてきたとしたならば、建物は外見では分からないダメージを蓄積している可能性があります。

・ 増築をしたことがあるか
過去に増築をしたことがある場合、その際に既存部の適切な補修・改修、増築部との接合をきちんと行っているかどうかは建物の耐震性に関わるポイントです。

・ 建物の形は?
建物の1階の形を平面的に見た時、整った建物(長方形または長方形に近い)は、地震に対して比較的強いとされます。逆に、不整形な建物(L字型・コの字型など複雑で凹凸が多い)は、地震には弱いとされます。

・ 1階と2階の壁面が一致しているか
2階と1階の壁面の位置が一致していれば、2階の地震力はスムーズに1階の壁に流れます。一方、2階壁面の直下に1階壁面がなければ、2階の地震力は床を介して1階に流れることとなり、床面に大きな負荷がかかります。

・ 壁の配置はバランスがとれているか
壁の配置が平面的に偏っていると、壁の多い部分は剛性が高いため揺れも小さく、逆に壁の少ない部分は揺れが大きくなります。そして揺れの大きい部分から先に壊れていきます。

・ 基礎の種別は何か
鉄筋コンクリートによる布基礎・ベタ基礎・杭基礎のような堅固な基礎は、同じ地盤に建てられたその他の基礎と比べてより堅牢です。

まとめ

中古物件を選ぶ際は、見た目や内装だけでなく内部の状態にまで注意する必要があります。上述したような住宅診断、耐震診断のポイントをチェックすることで、より優良な物件を購入できるでしょう。

1981年以前の旧耐震基準で建てられた物件であっても、しっかりとした造りで耐震性が備わっている物件や、維持管理が良く、劣化状態がそう悪くない物件もあります。そういう掘り出し物を発見する際の参考として役立てて下さい。(提供: 不動産投資ジャーナル

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