「和のおもてなし」を海外から訪れる人にも日本人にも! 「星のや東京」がいよいよ2016年7月20日に東京・大手町で開業します。1泊7万8,000円から。日本のホテルブランドの1つ「星野リゾート」が日本の一等地で打ち出す「星のや」は、世界のリッツやアマンと競って世界に羽ばたくことができるでしょうか。
コンセプトは「塔の日本旅館」
「星のや東京」がオープンするのは、千代田区大手町で進められてきた「連鎖型都市再生プロジェクト」地域の1つ、KDDIビルの東側に作られる「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」。2棟のうち1棟、地上18階建ての全館を使います。
コンセプトは「塔の日本旅館」。外観は出来上がりつつあり、外からも障子や和風照明がうかがえます。1階の玄関で靴を脱ぎ、ほぼ全館畳敷きの内部に入ります。裸足でエレベーターにも乗るという体験を、寝る時以外は靴をはいている外国のお客様はどういう反応をするでしょうか? 客室は84室あり、館内ではずっと浴衣で過ごすようです。
初日の宿泊を検索してみました
「星のや東京」は 公式サイト からすでにオンライン予約ができ、4月下旬からは電話予約も可能とのことです。
ちなみに大人1人で初日の7月20日を空室検索すると、基本の「桜」部屋は1泊1室宿泊料金が9万6,000円で既に満室となっています。各階で最も広い「菊」部屋が1泊1室12万3,000円。まだ若干空き部屋があるようです。
客室は全室畳敷きで各階に「お茶の間ラウンジ」を設けています。到着したら日本茶の飲み比べができ、夕食後には日本酒で寛げます。朝は宿泊客におにぎりを用意し、街歩きのためには珈琲を用意してくれます。昼間、読書もできるゆったりとしたスペースとなっています。
食事と温泉が大きな特徴です
食事は、「日本旅館の料理」を提供するといいます。指揮を取る料理長は浜田統之さん。星野リゾートが運営する「軽井沢ホテルブレストンコート ユカワタン」のシェフで、2013年、フランス料理のオリンピックと言われる「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」魚部門で最高点を取った日本人初の銅メダリストです。ダイニングは地下1階にありますが、一般開放の食事処ではなく宿泊者だけが利用できるそうです。
もう一つの特徴は、最上階18階にある温泉「大手町温泉」とスパです。地下1,500メートルまで掘り進んで当てた「含ヨウ素ナトリウム塩化物強塩温泉」は、深掘りした温泉ならではの「療養泉」成分を含み、塩分が薄く肌を包み、熱が逃げるのを防ぎ、湯上がりのあともポカポカするそうです。これも宿泊者限定です。オイルトリートメントのできるスパも併設されています。
星野リゾートの星野さんのこだわり
なぜ、東京の都心の真ん中で、このような豪華和風ホテルにこだわるのでしょうか?
長野県・軽井沢の日本旅館「星野温泉」出身の星野佳路さんは、アメリカ・コーネル大学大学院でホテル経営を学んだ後、日本のホテルマネジメント会社に就職し、アメリカでホテルの建設や運営スタッフ教育に携わりました。そこで痛感したのが、一流の高級ホテルがたくさんある中、西洋スタイルを「まね」る日本のホテルが参戦しても、日本らしさもホテルらしさも発揮できないという苦い思いだったそうです。
星野さんは1989年に帰国して1991年に家業を継ぎました。それからの快進撃はテレビや雑誌でも取り上げられ、すっかり有名人となっています。
REIT化は、建物、設備の更新に苦しむ道を避ける意味が大きかった
ホテルや旅館は、大きな資産、設備を持つ会社と同じです。景気が落ち込むとその償却が「足かせ」になり、場合によっては破綻します。日本各地の旅館街で見られる光景であり、多くの装置産業にも共通する悩みです。
「星野リゾート」は、その道を避けました。全国で運営している物件をリート(REIT)に売却し、「星野リゾート・リート投資法人」を2013年に東京証券取引所に上場させました。そうして集めた資金で新たな物件を取得し、運営するホテルや旅館を増やしていきました。
星野リゾート・リート投資法人は、当初の保有物件6物件、資産規模150億円から、45物件・854億円の資産規模(2015年12月現在)になりました。星野グループの物件だけではなく、チサンイン、ANAクラウンホテルなど、他のホテルグループの一部も取得しています。
星野グループは現在、国内外で31のホテルや旅館を展開しています。最高ランクの「上質な非日常空間」を提供する「星のや」(6)、地域の魅力を再発見し、和にこだわった上質温泉旅館「界」(13)、西洋型リゾート「リゾナーレ」(4)、その他「個性的な施設」(8)の4ジャンルで経営しています(カッコ内は施設数)。
ホテル、旅館の施設はREITに入れ、売却するのも購入するのも、REIT物件の入れ替えだけです。償却を考えずに、施設の運営で一定の利回りを出すことに専念できるのは、非常に良く考えられた賢い経営手法といえるのではないでしょうか。
浴衣姿の外国人がTOKYOを変える日
東京・大手町界隈は、海外のホテルを含め豪華高級ホテルの激戦区です。ホテルの格付けといえば「ミシュラン」がありますが、「ミシュランガイド2016」(15年12月発行)によると、東京・大手町界隈では14年12月に開業したばかりの「アマン東京」(大手町)がいきなり「5パビリオン+」(5つ星+、「豪華で最高級」の上)に入りました。範囲を少し広げても、他の5つ星+は「シャングリ・ラホテル東京」(丸の内)、「フォーシーズンズ」(八重洲)、「マンダリンオリエンタル東京」(日本橋)の3つのホテルだけ。都内でも5パビリオン+のホテルは10のホテルに留まります。
ホテル格付けは公的第三者機関が行っているのではなく、ドバイのホテル「ブルジュ・アル・アラブ」のように独自に「七つ星」を名乗っているホテルもあるので、和風ホテル独自の格付けを考えてもいいでしょう。夏には浴衣姿のまま、東京の夏祭りにも行ってもらいたいというのが「星のや東京」の粋なセンスです。
日本は昔から、海外からの人とモノの刺激で大きく動く国です。TOKYOを浴衣姿で闊歩する大勢の外国人を見て、暑いなか背広で働いているビジネスマンたちに、何か革命的な変化が起きるのかもしれません。(提供: 不動産投資ジャーナル )
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