IC チップなど半導体製品の製造プロセスでいったん検査して廃棄しなければならなくなったウエハーを処理し、検査用ウエハーとして再び生産ラインにのせる加工を行う。それが「シリコンウエハーの再生事業」だ。
NEC <6701> やソニー <6758> など半導体製品のメーカーの立場からも、再生ウエハーは役に立つ。まっさらのウエハーを毎回、検査に使うのではなく、再生ウエハーも活用することで、コストを圧縮でき、経営の効率化にも不可欠なのだ。いわば「縁の下の力持ち」でもあるウエハー再生だが、同事業を推進する RS Technologies(RS テック) <3445> が成長に向けて、ウエハー再生に留まらない展開を見せつつある。
同社のその、半導体再生事業に留まらない、次の一手とは何なのか。今回は、RSテックが進める半導体製造分野での、野心的な取り組みを紹介する。
設備拡張と資本業務提携で狙う相乗効果
ICチップやメモリなどの半導体製品の検査をすると、加工されたり、パターンといわれる顧客がプリントした回路など、ウエハー自体は変質してしまう。そのため、いったん検査に使用したウエハーから再び、再生処理を行い、検査用として再利用する必要も生じるという。
RSテックはこの、半導体ウエハーの再生能力を拡大している最中。ラサ工業 <4022> から事業を引き継ぐ形で、半導体再生事業を開始した経緯があり、現在はRSテックが宮城県・三本木工場を引き継ぎ、稼働させている。ここで注目なのは、同社の設備投資への積極的な姿勢だ。
その一環として、海外での展開もRSテックは併せて推進。台湾子会社を通じて26億円を投資し、台南に工場を建設。4月19日から同工場を稼働させているのだ。台南工場については、取締役管理本部長の鈴木正行氏は「台南工場はすでに100%稼働しており、台湾ファンドリーからは来期以降、10万枚を大きく上回る受注のフォーキャストをいただいている。現在生産数量増加のボトルネックとなるポリッシング工程の設備投資を進めている」と話す。
RSテックは、資本業務提携でも、ウエハー再生事業の強化を推進。このほど、同社と日本バルカー工業 <7995> は提携し、シリコンウエハー再生事業を共同で推進することを明らかにした。具体的には、日本バルカー工業の子会社の生産能力を補う形での取り組みを始めており、RSテックは追加で数万枚のウエハー再生を担っており、シェアをさらに押し上げる効果を生みそうだ。今後、同業他社との資本業務提携の可能性もあるだろう。
同社の市場シェアは現在のところ、約19%。他方で、RSテックは現在、ウエハー再生市場でのシェア獲得について、40%を目標に掲げており、台湾工場の稼働開始で、約10%増加する見込みだという。また、日本バルカー工業との提携により、RSテックの市場シェアはほぼ30%になるとみられ、中期経営計画の一部に掲げる「生産力の拡大」「シェアの獲得」に向けて着々と手を打っている格好だ。
投資ファンドの立ち上げで目指す「半導体商社化」
ただ、RSテックの取り組みで特徴的なのは、本業のシリコンウエハー再生に加えて、半導体産業そのものを強化しようとしている点だ。その狙いは「半導体商社」の機能を備え、半導体ウエハー再生との相乗効果を狙うことだとみられる。
具体的な事業としては、製造業を中心とする中小中堅企業を対象にする投資ファンドの組成。RSテックは4月中旬にすでに、日本ベンチャーキャピタル(NVCC)と共同でファンドを立ち上げることを公表。2億円を出資する予定だという。NVCCがさらに1億円を出資する構えだ。
ファンド立ち上げの最低金額は10億円となっており、事業会社や金融機関、ベンチャーキャピタルから予想を超える出資申し込みがきているという。現在、投資先の選定中で今年末から来年初頭をメドにファンドが立ち上がる見通しだ。
同社IR担当伊藤氏によると、「当社がラサ(ラサ工業<4022>)から事業を承継し、事業を再生させたことがシリコンウエハー業界の枠を超えて様々な業界から注目されている。現に上場以後、様々な問い合わせが来ている。今回の取り組みもその一環だ」と話す。
鈴木正行取締役管理本部長は、投資ファンドの組成について「製造業を中心に日本の下町の活性化を狙うファンドを通じて中小中堅企業に投資する予定だ。半導体関連事業への投資が望ましいと考えており、半導体製造過程での消耗品メーカーなどに投資することで、『半導体商社』の機能ももてるよう取り組む」とした。成長戦略の一部に位置付けるとともに、半導体関連事業での相乗効果も期待できそうだ。
同社の中期経営計画を振り返れば、「生産力の拡大」「シェア拡大」「市場の開拓」「中国半導体マーケットへの参入」を同社は目指す。それぞれの取り組みがその実現へ向けて相乗効果を狙いながら、展開していきそうだ。