シェアハウス,民泊ビジネス
(写真=PIXTA)

東京23区で通常の投資物件を賃貸で運用する場合の利回りは、2016年現在、約4〜6%だが、シェアハウスにすると6%以上、民泊で運用の場合は8〜12%になると言われている。

政府は3月30日、安倍首相を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を開催し、2020年の訪日外国人旅行者数の目標を年間2000万人から4000万人に倍増させることを決定した。2030年には6000万人を目指す。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2015 年の訪日外国人客は1973万7000人であったので、5年後にはその2倍、15年後には3倍を目指すということになる。

しかし、東京都内のホテルはすでに予約が取りにくく、2015年は稼働率90%の状態が続いていた。もしこの目標が実現すれば、現在の宿泊施設で対応できる人数を完全に超えてしまうだろう。都内で新たに大規模なホテルを建設することも考えられているが、用地や建設・管理コストを考えるとそれも容易ではない。

民泊の規制緩和動向

その対策の一環として、政府では「民泊」の規制緩和の議論を続けてきた。一般の個人宅に旅行者を泊める民泊については、旅館業法への抵触の懸念なども指摘されているが、2015年12月には東京都大田区で「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業条例」が可決された。これにより、大田区は「国家戦略特区」として旅館業法の特例を受け、認可を受けた物件やマンションの空き部屋などを有償で貸すことが可能になった。

1月29日には申請の受付も開始されるなど、順調な滑り出しに見えたが、実際にはその後の申請件数はそれほど伸びていないようだ。4月24日現在で11件程度にとどまっている。一方で、宿泊先を探す旅行者と空き部屋を貸し出す物件オーナーのマッチングサイト「Airbnb」には、日本全国で2万件を超える登録がある。大田区の物件は212件あり、正式な認可を受けていない、グレーゾーンでの経営の実態が浮かび上がる。

従来の民泊申請の認定要件には、

・ 滞在期間が6泊7日以上であること
・ 居室の床面積が25平方メートル以上で、台所、浴室、トイレ、洗面設備があること

というものがあったが、この厳しさが申請率の上がらない主な原因ともいわれていた。

そこで、厚生労働省と観光庁による検討を経て旅館業法の改正がなされ、4月1日からこの条件が緩和された。民泊は、旅館業法上の「簡易宿所」という分類に準じて扱われ、

・ 滞在期間6泊7日という条件がなくなった
・ 居室の床面積は、宿泊人数1人当たり3.3平方メートル(10人未満の場合)
・玄関帳簿の設置義務も緩和

となったのだ。規制の緩和によって認可を取得しやすくなり、申請率の向上が期待される。

しかしながら、民泊については法的な懸念以外にも、近隣とのトラブルや設備の新設、マンション管理組合の承諾など、問題が山積している。また、東京都江東区では「24時間受付常駐」を条件にするなど、地域によっては規制をより厳しくしたところもある。

最近では取り締まりが強化され、廃業した業者も目立つようになった。Airbnbホストが集まるFacebookグループでも、撤退に伴い家具や家電の処分セールを行っていることも多くなっている。

取り締まりで適切な需給バランスへ

しかし、シェアハウスの場合と同じように、厳しく取り締まることで違法業者が減り、合法的に運営できるようになることは、適正な需要と供給のバランスで適切に運用できることを意味する。さらに規制緩和が図られるなどして民泊が拡大すれば、民泊用物件への投資もしやすくなり、購入する際のローンの対応なども可能になるだろう。

政府の動きとしては、観光庁が民泊関連のセミナーと討論会を企画・参加するなど、引き続き取り組みが行われている様子が見受けられる。都市部を中心に不足している宿泊施設を確保し、訪日外国人観光客の誘致拡大につなげるための取り組みとして期待が高まる。

政府は一般住宅に旅行者らを有料で泊める「民泊」の全面解禁に向けた原案を5月13日にまとめた。現在は禁じている住宅地での営業も認める方針だ。マンションなどを所有する貸主がネットで簡単な手続きを済ませれば、旅館業法上の許可なしで部屋を貸し出せるようになるとのこと。都市部を中心に足りなくなっている宿泊施設を増やし、訪日外国人の拡大につなげる目的だ。

それに先に立って、現行の法律下でも合法的に民泊、簡易宿所を経営できるように努力している業者もいる。総合不動産デベロッパーのリード・リアルエステートは大森駅近辺で土地を購入し、大田区の関連規定に沿って一棟の小型アパートを建てる計画をしている。建設が終了してから、民泊の認可を受けた上で事業経営を行う予定とのことだ。(ZUU online 編集部)