Airbnb
(写真=PIXTA)

民泊の市場が急速に拡大しています。2016年1月18日付の日本経済新聞では、大手不動産会社の大京穴吹不動産がこの春をめどに民泊事業を開始するという記事が書かれています。同社は国家戦略特区のひとつ大田区の京浜急行蒲田駅近くの戸建てを購入し、民泊事業を展開するとしています。また、その大田区では2016年2月12日、宿泊旅行サイトを運営する会社に、民泊条例に基づく認定書を日本で初めて交付されました。同社はJR蒲田駅近くにある戸建ての古民家を改装して、民泊事業をスタートするそうです。民泊市場は急速に拡大しています。

大田区で民泊2施設が認定

日本国内の民泊事業を強く後押ししたのが、アメリカ西海岸生まれで世界最大手の空き家仲介サービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」です。日本国内でも登録物件数が2万件を突破し、年間で100万人以上が利用するなど、急成長を遂げています。

しかし、民泊事業の代名詞と言えるAirbnbの存在は法律的にグレーゾーンでした。国内で登録されている物件は、旅館業法上の届け出が出されていない事から厳密には「違法」だという声が強く、ともすれば個人のお小遣い稼ぎ、法律すれすれの危ういビジネスというイメージを持つ人も少なくなかったのです。しかし現在、日本政府は民泊を認めるために急ピッチで規制緩和を進めており、国家戦略特区内の特例として、 (1)旅行客が7日以上滞在 (2)必要に応じ行政が立ち入り調査 (3)近隣住民への事前の周知 などを条件に、大田区で民泊事業が認められました。2月12日には、民泊用の2施設が認定され、予約受け付けが始まっています。

相次ぐ大手企業の参入

そうした追い風を受けながら、不動産をはじめとする国内の大手企業が、相次いで民泊事業に参入しています。

1. 大京穴吹不動産
京急蒲田駅から徒歩圏内になる2階建て住宅を購入、改装して4~5人が宿泊できる施設にするそうで、自社の空室予約サイト「旅家」で予約を受け付け、鍵の受け渡しは協力会社を通じて行うそうです。なお、今後は大田区内で空き家の戸建てを購入し、民泊事業を展開する計画となっています。

2. アパマンショップ
アパマンショップは大田区内で、同社のグループ会社がサブリースしている物件を利用して民泊事業を行う方針を明らかにしており、契約期間が7日から30日間のAPAMANB&B(アパマンビーアンドビー)という民泊用の新しいサービスを用意するほか、民泊の利用者となる外国人を集客するために、英語、韓国語、中国語の3カ国語で対応するそうです。このニュースが株式市場に伝わると、アパマンの株は連日ストップ高となりました。

3. シノケングループ(ジャスダック)
この他にも、ジャスダック上場のシノケングループが200戸の社有マンションなどを利用して、民泊サービスを提供することを発表しています。すでに大田区内に46戸のマンション開発用地を確保しており、民泊が可能な投資用マンションにする計画もあるということです。中古物件の再利用ではなく、新築からの開発で差別化を図る狙いがあるようです。

4. 京王電鉄・エイブル
京王電鉄が民泊の予約仲介サイトを運営する会社に出資しました。同社では、ホテル事業との連携や外国人旅行客のインバウンド需要を掘り起こして、沿線の活性化につなげるほか、子会社の不動産会社が管理する空室物件を活用する考えを示しています。この予約仲介サイトの運営会社は、不動産仲介大手の「エイブル」とも業務提携しています。

5. インベスターズクラウド
アプリで始められるアパート経営「TATERU(タテル)」を運営している同社では、民泊事業に乗り出し、民泊完全代行サービス「tateru bnb(タテルビーアンドビー)」を始めました。行政への申請から、リノベーション、多言語サポート、ルームクリーニング等、不動産管理会社ならではのきめ細やかなサポート体制をしき、今後の民泊への期待の大きさが読み取れます。

こうした大手企業の参入は、さらに日本国内の民泊事業を大きく成長させると思われます。

民泊事業の期待と課題

すでにある資産を有効活用することで生産性を高めようという「シェアリングエコノミー」の観点から、民泊には高い期待が寄せられています。人口減少が急速に進む日本では、820万戸の空き家をどうするかが大きな社会問題になっています。その一方で日本を訪問する外国人観光客が増加し、都内はビジネスホテルでも客室が取れない状態が続いています。また、2020年開催の東京オリンピックに向けて、今後さらに観光客の増加が見込まれています。

民泊は日本が現在直面している経済的、社会的問題を解決する糸口であり、経済活性化の起爆剤となる可能性を秘めています。今、求められていることは、既存の法や慣習に民泊のサービスを合わせるよりも、むしろ、民泊への期待や可能性に応えられるように法律を整備し、ルールを変更する事なのかも知れません。

まとめ

民泊の規制緩和による経済効果は約10兆円と予測されており、民泊市場の急拡大は不可避でしょう。Airbnbで提供される部屋の1泊あたりの料金は、家賃のおよそ1割程度が相場とされています。このため、個人投資家にとって不動産投資物件をAirbnbなど民泊に転用することは、より多くの収益を生む新たなビジネスチャンスと言えそうです。もちろん、実際に部屋を提供する際には、法令順守、近隣住民への配慮、運営コスト、事故や事件などのリスク対策が必要不可欠です。大手企業の参入で、法律やルールの整備も急ピッチで進むことでしょう。そうした情報の収集を欠かさないことが非常に重要となりそうです。(提供: TATE-MAGA

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