長期投資と聞いて思い浮かぶ著名投資家といったら、米国で「投資の神様」といわれるウォーレン・バフェット氏ではないだろうか。同氏は、新聞配達やゴルフ場のボール拾いなどのアルバイトをしながら、11歳の時に初めて株式投資を始めた。それから70年以上株式投資を続け、資産を世界有数の資産家となった。現在85歳のバフェットの資産は667億ドル(約7.3兆円)に達している。

バフェット流の投資の基本は、増配や自社株買いなどで株主還元に積極的な企業を安い時に大量に買い、長期投資するという極めて単純なスタイルだ。そして配当を再投資することで複利のメリットを最大限に享受して資産を雪だるま式に増やしてきた。バフェット流投資を理解する上で「増配」はキーワードのひとつとなるだろう。ここでは、日米の増配企業に焦点をあてて紹介していく。

米企業「連続増配最長記録」は60年 P&Gは59年連続

日本の連続増配企業としては、花王 <4452> が最長で26期も連続して増配を続けていることが有名だ。

しかし、米国はスケールが全く違う。60年も連続して増配しているドーバー・コーポレーションという会社がある。さらに、生活必需品で有名なプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など3社が59年連続でドーバーを追っているのだ。25年以上増配を続けている企業に至っては51社も存在する。マイナス金利の今、値上がり益を狙うのでなく、配当を狙った長期投資が脚光を浴びている。これだけ連続増配できるのは企業業績が安定していることの証明でもある。

冒頭で紹介したバフェット氏は、運用総資産の割に投資銘柄数がそれほどないのが特徴なのだが、連続増配51社のリストの中にバフェット氏が大株主の銘柄が、プロクター・アンド・ギャンブル、コカ・コーラなど4社も見つかる。

バフェット氏の保有している銘柄はある程度、開示されているので世の中にはバフェット流投資を真似ている投資家も多く存在する。ただ、バフェット氏のコピーをしなくても、米国の連続増配企業の51社をパッケージで簡単に買う方法がある。

「S&P500 配当貴族指数」ってなんだろう?

NYダウやS&P500指数などを算出しているS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出しているスマートベータ指数の一つで、米国S&P500指数の採用銘柄で25年以上毎年増配している優良大型株で構成された指数だ。

スマートベータ指数とは、現在、世界の機関投資家に流行している指数だ。米国の機関投資家が、運用の結果を測定する時に基準(ベンチマーク)とするのがS&P500指数だ。日本ならベンチマークはTOPIXになる。米国の投資家が、S&P500指数の全銘柄を買えば、ベンチマーク通りのパフォーマンスを得ることが出来るが、特定のファクターにバイアスをかけて、もっと少ない銘柄数で、ベンチマークを上回ることを目標にしたのがスマートベータという投資方法だ。

たとえば、「S&P500 配当貴族指数」という連続増配にバイアスをかけた51銘柄に投資することでベンチマークを上回るパフォーマンスを効率的に得ようという投資だ。実際過去10年で比較すると、S&P500指数が7%程度上がったのに対し、S&P500配当貴族指数はそれを大きく上回り10%以上上昇している。

スマートベータ指数のユニークなところは、たいていはその指数をETFで買うことが出来る点だ。日本でも最近はスマートベータ投資が増えてきている。「JPX日経400指数」は、ROEなどグローバルで評価される基準をクリアした企業で構成された指数で、公的資金の買いはこのETFが多い。最近日銀など公的資金が「賃上げ・設備投資指数」という賃上げ・設備投資に積極的な企業で構成された指数のETFを買い始めている。

米国の連続増配企業のポートフォリオを簡単に買うことができるように設定されたのが「S&P500 配当貴族指数 <2044> 」のETFだ。ETFとは上場投信のことを言い、投信でありながら株式市場に上場しており、株と全く同じように売り買いができる。

S&P500 配当貴族指数でバフェット流投資?

個人投資家が、米国株の好配当、連続配当株を実際に買おうと思ったときに一番大変なのが、再配当だ。バフェット流投資の極意は再投資にあるので、配当毎にその資金で追加に株を購入しなければならない。

多い会社は四半期毎に年4回も配当する。配当金額が小さいなら再投資するといっても小さい金額で株を買うことが難しいこともあるかもしれない。S&P500 配当貴族指数 <2044> の魅力は、配当の再投資が指数に反映していることだ。このETFを保有していれば、再投資という手間がかかる作業は運用会社が代行してくれているようなものだ。

株が大きく下げて割安になったときに、このETFをNISA口座で購入し、長期保有するのは、バフェット流の投資原理に近いだろう。また、このETFの2016年5月25日現在の株価は1万310円。1株から投資出来るため、1万円ちょっとで投資が始められることも魅力の一つだろう。

ただ気をつけなくてはならないのは、S&P500 配当貴族指数は米株の指数なのでドル建てなのだが、その指数を円換算して買うことになるため、為替リスクは存在することだ。いくらファンドが値上がりしても、円高になるとその分目減りしてしまうことには留意しよう。

あくまで、配当貴族指数は投資の方法の紹介であって、投資をすすめるものではない。ETFのメリットとデメリットをよく考えて自分の投資スタイルに合わせた投資をすることが一番大切だ。(ZUU online編集部)