婚活,ジューンブライド,自治体
(写真=PIXTA)

独身男女の婚活を支援する地方自治体が増えてきた。単に相談窓口を置き、婚活パーティーを開くだけでなく、大量の電子情報「ビッグデータ」を活用し、民間の結婚相談所も顔負けのマッチングを進めるところもある。

高度経済成長期には見合い写真を手にした世話好きの女性が街を駆けずり回って結婚相手を探していたが、その役割を自治体が担い始めた。地方創生に向けて少子化と人口減少に歯止めをかけるのが狙いだ。

愛媛県はコンピューターで好みの相手を紹介

婚活支援にビッグデータの活用を始めたのは愛媛県。2008年に開設した「えひめ結婚支援センター」が蓄積したお見合い事業の会員や婚活イベント参加者のデータ約150万件を2015年3月から活用している。

過去の参加者の嗜好を行動履歴などから組み分けし、登録者が好みの相手を探す際に、どのグループに属すかを判断して好みに見合う相手を紹介する仕組みだ。お見合いまで行けば、半数が交際へ進む。愛媛県子育て支援課は「ビッグデータの活用でお見合いやカップル成立の確率が上がった」と喜んでいる。

交際をフォローするボランティアも200人近く確保した。ビッグデータで好みに合った相手を見つけたあとは、ボランティアの出番だ。1対1のお見合いではボランティアが日程を調整、同席して2人を引き合わせる。

交際する意思の確認などその後のフォローもボランティアが進める。互いの距離が縮まるように親身になって相談に乗り、うまくいかない人を励ましてその気にさせる。実績を上げている背景には、こうした昔ながらの世話焼きの力も大きい。

婚活イベントはセンター開設から1月末までで1747回開催し、6830組のカップルが成立した。お見合いの登録者は1月末現在で4964人。これまでに2379組のカップルが生まれている。

鳥取県は2015年12月、鳥取市と米子市に結婚サポートセンターを設けた。結婚したい独身者の情報を蓄積し、ビッグデータとして活用する方針で、2019年度までに1000人の登録、80組の成婚を目標としている。

対象者は県内在住か勤務者だが、鳥取へ移住を希望する人も受け付けている。登録者を増やすため、2015年度中は会員登録を無料にした。4月末までで742人の会員が集まり、87件のお見合いが成立、19組が交際に発展した。

鳥取県子育て応援課は「鳥取県では若い女性が減り、出会いの場が少なくなっている。データが蓄積されればそれも活用してマッチングし、少子化対策に生かしたい」と期待を込めている。

佐賀県は『ゼクシィ』と提携、首都圏の女性に狙い

佐賀県は2015年から婚活情報サービスの「ゼクシィ縁結び」を運営するリクルートマーケティングパートナーズ(東京)と提携、「佐賀ご当地縁結びプロジェクト」を進めている。首都圏に住み、地方に興味を持つ若者に佐賀県をPRし、県民との結婚や移住を促すのが狙いだ。

第1弾は9月に東京都内で「ご当地結びフェス」を開いた。首都圏在住の男女を佐賀のグルメ屋台、利き酒体験などでもてなし、佐賀県と首都圏若者約300人がグループ交流の飲み会を楽しんだ。

第2弾は「ご当地結び旅」と銘打ち、11月に首都圏在住の女性30人を2泊3日、宿泊、飲食、飛行機代込み500円で招待。農業体験やバルーンフェスタの見物、嬉野温泉への宿泊などを通じ、佐賀県民の男性と交流した。

佐賀県広報広聴課東京オフィスは「イベントは佐賀県について知ってもらい、好きになってもらうきっかけを作るのが狙い。イベントで知り合い、交流を続けている人もいるようなので、移住や結婚につながることを期待する」と語った。

若い女性の不足が地方の人口減少を加速

地方で人口減少が進む理由の1つに若年の女性の減少がある。農村や漁村で後継者を確保しても、結婚相手が見つからず、独身のまま中高年を迎える例が珍しくない。地方に若い女性が少ないからだ。

男女雇用均等法で男女を指定して雇用することはできなくなったが、地方では男性の求職が女性より多くなりがち。表向きは男女平等を強調しながら、あからさまな差別が残っているためで、女性の求職の多くが非正規雇用だ。

女性が一般事務職で正規職員を目指すとなると、都会へ出なければ就職口がなかなか見つからない。その結果、地方の若い女性不足が少子化と人口減少を加速している。

過疎地を中心に、多くの自治体が2000年前後から婚活事業に乗り出した。日本青年館が全国2253自治体を対象とした調査では、ほぼ半数が2003年度から2年間に農業体験に都市部の女性を呼ぶなど出会い事業の支援をしていた。

ただ、1度や2度のお見合いパーティーでカップルが誕生するのは珍しい。行政の婚活がどの程度、結婚につながったかを示す明確な全国調査結果は見当たらないが、地方の人口減少が加速しているだけに、大きな成功例といえるのは数えるほどしかないといわれている。

そこで登場したのが、ビッグデータの活用や縁結び企業とのタイアップによる新しい形の婚活事業だ。新事業の裏側には、若い女性不足による人口減少に苦しむ自治体の苦しい胸の内がうかがえる。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。