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(写真=PIXTA)

少子高齢化による人口減少が問題となっている日本、しかし東京のアパートの数は増加中

アパート建築ラッシュが続いています。全国的には年間30万戸以上のアパートが建築されており、その数は3年連続で増加しています。

東京都の住宅着工統計においても、2015年8月時点の建築主が賃貸する目的で建築を行う貸家は6079戸(前年同月比23.7%増)であり、3ヶ月連続で増加しています。同統計資料では建築主が自分で居住する目的で建築を行う持家の着工件数も公表しています。持家の着工件数は1580戸(前年同月比0.3%増)であり、貸家の約4分の1しかありません。しかもその数字は2か月ぶりの増加であり、持家と比較すると貸家の増加の勢いはかなり高いことが分かります。

アパート建築ラッシュは全国的な傾向ですが、人口については全国的に減少傾向が続いています。その中で東京都の人口は2015年10月1日時点で1349万人であり、前年同月比11万人の増加でまだ微増傾向を維持しています。但しその増加率は前年同月比わずか0.8%のプラスであり、上述の貸家が前年同月比23.7%も増える理由としてはいささか弱いものと思われます。

このように今、全国的に賃貸アパートに関しては、需要が増えていないにも関わらず供給が増えているというパラドックスが生じています。では何故これほどまでにアパートの建築ラッシュが続いているのでしょうか。ポイントを3つに絞って解説します。

なぜアパートの数が増加しているのか

まず1点目は税制面です。相続税強化と消費税増税のタイミングが重なったことが主要な要因に挙げられます。

相続税については、2015年1月より基礎控除を受けられる額が4割も減少したことにより、相続税課税対象者が増加しました。基礎控除額は3000万円+法定相続人の数×600万円です。そのため妻と子供1人という家庭では4200万円以上の資産を持っていると課税対象者となってしまいます。

都内の場合、元々の不動産の資産価値が高いため、退職金等の現金資産を合わせるとサラリーマン世帯でも4200万円以上の資産を保有するような人が現れます。そのため相続税対策としてアパートを建てる人達が増えてきました。また建築費については消費税が発生します。10%に増税される前に建ててしまおうと考える人も多く、これもアパート建築を後押しする強い要因となっています。

2点目は強烈なセールスです。資産家のところには銀行とハウスメーカーの2つの営業マンがアパート建築を持ちかけます。

ハウスメーカーは自分たちの利益に直接かかわるため、当然強い営業を仕掛けてきます。さらに銀行もセールスに加わります。特に現在、地方銀行では人口の減少に加え企業数も減少していることから、優良な融資先の開拓に必死の状態です。

銀行にとって新築アパートへのローンは収益見通しも立ち易く、土地建物も担保に取れるため優良な融資先となります。そのため銀行とハウスメーカーはセットになっていることが多く、資産家は両方からの強烈なプッシュを受けることにより最終的にはアパート建築に踏み切るというケースが多いです。

3つ目の理由は、収益性です。相続税に関しては賃貸物件であれば戸建賃貸でも、鉄筋コンクリート造のマンションでも同様の軽減措置が受けられます。そのため相続税対策だけを考慮すれば、特にアパートに拘る必要はありません。

しかしながら、木造アパートと戸建賃貸、鉄筋コンクリート造のマンションを比較すると、建築費が安く敷地の活用効率が高い木造アパートが最も収益性が高くなります。実際、新築当初であれば木造アパートも鉄筋コンクリート造のマンションも賃料は同じです。

一方で建築費は木造アパートの方が安いです。また木造アパートと戸建賃貸の比較の場合、建築費はほぼ同等ですが、賃料単価は1戸当たりの面積が小さい木造アパートの方が高くなります。そのため収益性を比較していくと木造アパートが最も収益性が高くなるため、木造アパートを建築するケースが多くなります。

不動産投資家はどのようなポジションをとればよいのか

木造アパートは小ぶりな物件が多いのが特徴です。このような物件の中には23区内のワンルーム条例の規制の網にかからない戸数の物件も存在します。中央区などは10戸以上の集合住宅は規制の対象となり、最低住戸面積を25㎡以上にする必要が出てきます。そのため9戸以下の木造アパートであれば、1戸当たりの面積を20㎡にもすることが可能で、賃料単価を高く維持しながら賃料総額を抑えることができます。

このような物件であれば空室率も低く投資効率も高いため、一定の競争力があると言えます。投資家としては、このようなワンルーム条例の規制の網にかかっていない小ぶりな一棟モノを購入することが狙い目となるでしょう。

但し、木造アパートは鉄筋コンクリート造の物件と比較して陳腐化が早く、リスクの高い投資と言えます。そのため立地を重視し、築年数や入居状況、将来の換金性の高さなどを考慮するという点では通常の不動産投資と違いはないでしょう。改正相続税は始まったばかりなので、しばらく木造アパートの建築ラッシュは続くと思われます。小ぶりな一棟モノの投資チャンスはこれからなのかもしれません。 (提供: TATE-MAGA

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