要旨

これまで長期で安定した運用利回りを確保するためには、国内債券を中心にポートフォリオを組むことが基本であった。国内債券は利回りが低くても元本は確保されており、更に株式など値動きが激しくリスクの高い資産とは逆相関に働く性質なども加わり、全体の収益を安定させることに大いに役立っていた。

しかし、マイナス金利になり元本を確保できないことが確定してしまうのであれば、いくら安定していても投資できない。そこで、国内債券に代わり安定した一定の利回りを確保できる資産が必要になっている。

現状では、本来国内債券に投資されるべき資金の多くは外国債券などに投資されているようである。本稿では、RMBS(Residential Mortgage Backed Securities、住宅ローン担保証券)に長期安定した一定の利回りを確保する役割を期待できないかどうか検討してみた。

RMBSは複雑なキャッシュ・フローとリスクを伴うため、慎重に投資判断しなければならないが、信用リスクを心配する必要はほとんどなく、特に発行直後の単価100円近辺で推移しているRMBSは、長期保有を前提にするならば、マイナス金利下においても安全にプラス利回りを確保できる可能性は高い。

オーバーパーのRMBSはモデルにより計算された指標を参考に投資判断するしかない。その際は、モデルにより計算結果が大きく異なるため、モデルの想定が現在の相場環境に近いものかどうかなどを吟味し、充分なスプレッドが確保できていることを確認しながら投資しなければならない。

一方で、RMBSに不利と言われているネガティブコンベキシティーの影響は現れる場合と現れない場合があり、リスクを過剰に見積もることなく投資判断することも必要になる。

はじめに

日銀がマイナス金利政策を導入してから既に4ヶ月が経過する。その間、金利はほぼ一方的に低下し続け、既に期間10年以下の国債はマイナス金利が定着してしまった感がある。期間20年以上の超長期国債はプラス金利を維持しているが、マイナス金利政策導入後の金利低下幅は10年以下の金利よりもむしろ大きく、金利は長短含め全体が大きく低下している。

このような運用環境で絶対収益を確保しなければならない投資家には厳しい状況が続いている。保険、年金基金などマイナス金利下でも一定のプラス収益を契約者に約束している投資家は、少しでも利回りが高く長期安定した投資対象資産を確保しなければならない。

これまで長期で安定した運用利回りを確保するためには、国内債券を中心にポートフォリオを組むことが基本であった。国内債券は利回りが低くても元本は確保されており、更に株式など値動きが激しくリスクの高い資産とは逆相関に働く性質なども加わり、全体の収益を安定させることに大いに役立っていた。しかし、マイナス金利になり元本を確保できないことが確定してしまうのであれば、いくら安定していても投資できない。

そこで、国内債券に代わり安定した一定の利回りを確保できる資産が必要になっている。現状では、本来国内債券に投資されるべき資金の多くは外国債券などに投資されているようである。本稿では、RMBSに長期安定した一定の利回りを確保する役割を期待できないかどうか検討してみる。