livedoor
(写真=PIXTA)

無料メッセージアプリを提供するLINEが7月15日に日米で同時上場する。今やその名前はあまりにも有名だが、会社の生い立ちを知る方は意外と少ないかもしれない。実は、「ホリエモン」こと堀江貴文氏がかつて社長だったインターネット関連企業、ライブドアの遺伝子を脈々と受け継いできた会社なのである。今回はその経緯と、現在のLINEの事業展開について見ていこう。

LINEのルーツはライブドア

「ライブドア事件」があったのはちょうど10年前の2006年。同社は粉飾決算をしたとして06年に上場廃止、堀江氏は11年、粉飾を主導したとされ懲役2年6ヶ月の実刑が確定した。(同年長野刑務所に収監され、2013年には仮釈放となった。)その後、同社は経営体制を刷新、社名をLDHに変え、ブログなどのサービスを強化すると同時に、新たに同名の子会社「ライブドア」を設立した。この初代代表取締役を務めたのが、現LINEでCEOを務める出澤剛氏であった。

ライブドアを2010年4月に約63億円で買収したのがNHN Japanだ。NHN JapanはLINEの前身であり、人気オンライン・ゲーム・ポータル「ハンゲーム」や「NAVERまとめ」を提供していた。同社は13年にゲーム部門を新会社として分離し、社名をLINE株式会社に変更して現在に至っている。

人材の宝庫だったライブドア

LINEの経営陣を見てみると、社長の出澤剛氏をはじめ、上級執行役員の池邉智洋氏など4人がライブドア出身である。旧ライブドアはこのほかにもネット業界の著名人を輩出している。やはり堀江氏には優秀な人材を引きつける魅力があったのかもしれない。

LINEの事業展開

LINEは、韓国のインターネット検索ポータルサイト最大手企業NAVERが現時点で87%強を出資する韓国資本の会社である。上場後もNAVERが筆頭株主に残り、その他の投資家は株式の19%を保有することになる見通しだ。

現在の事業は大きく2つある。コミュニケーション及びコンテンツ事業と、広告事業だ。前者は売上全体の約7割を占めるLINE本体のサービスで、チャットや無料通話、スタンプを含むコミュニケーション事業と、「GAME」「PLAY」「マンガ」などのコンテンツ事業の2つが主体である。残る3割の広告事業は、「公式アカウント」や「スポンサードスタンプ」などのLINE広告事業と、LivedoorやNAVERまとめのポータル広告事業からなる。

LINEの売り上げは成長に鈍化が見られるものの、伸びている。昨15年12月期はラジオ型の音楽配信サービス「MixRadio」の失敗と撤退が影響し、赤字決算となった。しかし売上高は1211億円、前年比4割増と大きく伸び、今年第1四半期(1-3月)は1年前から2割増収、営業利益は3.7倍の53億円に急伸している。今年は新規事業のタイムライン広告が大きく寄与し、全体の収益をけん引している。

LINEの収益は順調に拡大

今年3月の月間アクティブユーザー数(ひと月に1回以上アプリを起動した人数:MAU)は全世界で一年前の約2.05億人から約2.18億人に増加、なかでも台湾、タイ、インドネシアでは約7000万人から約9100万人と大きく増えている。

日本のMAUは約6100万人だ。国内のスマートフォン利用者が2016年4月時点で5496万人(ニールセン調べ)であることを考えると、国内市場では利用者の拡大よりも広告も含めた課金ビジネスの拡大が今後の収益成長のカギになる。このため同社は昨年、幅広い領域で新サービスを相次いで立ち上げた。音楽が聴き放題の「LINE MUSIC」や、求人情報「LINE バイト」、ライブ配信「LINE LIVE」などがそれで、LINEのアカウントやメッセージ機能をベースにしたプラットフォームサービスだ。

海外でも、まずコミュニケーションツールとして各国市場のトップになり、そこからプラットフォーム化を進めるという展開を狙っている。台湾とタイでは既にコミュニケーションアプリとしてトップの地位を確保、ここから各種プラットフォームサービスを浸透させるフェーズに入っている。

昨年投入の多くのサービスが今後の成長をけん引

14年末にエイベックスやソニー・ミュージックとの共同出資で始めた「LINE MUSIC」は特に好調で、サービス開始の初月で860万ダウンロードを超えたという。「LINE バイト」や「LINE グルメ予約」もLINE基本機能との相性がよく、順調だ。「LINE バイト」は企業が求職者とスピーディにコンタクトできる機能を提供し、若い世代の利用が増えている。「LINE グルメ予約」の登録店舗数は、2015年12月に、オンラインサービス最多となる4.5万件超になった模様だ。

これら課金も可能なサービスの拡充で、今後、LINEは単なるコミュニケーションツールから、音楽、就活、外食、金融なども含めた人々の生活インフラとして力強い収益成長が期待できそうだ。また同社はインテル社とIoT、マイクロソフトとAI技術で提携し、これらの分野でのLINEサービスの浸透・拡充を狙っている。昨年に投入したお財布アプリ「LINE Pay」も、FinTech領域における事業展開の足がかりとなるのではないか。

2011年のリリースから短期間で日米同時上場を果たすことになったLINE。上場後も革新的なグローバル企業として成長し、日本を代表する次世代企業の一員として人々の生活プラットフォームとなることはできるのだろうか。注目が集まる。

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