英国のEU離脱を問う国民投票について、各国のマーケット参加者は「(なんだかんだで)残留だろう」と考えており、株価もそれを織り込んだ水準であったため、冷や水を浴びせかけられる形となった。結果、日経平均は1000円を上回る下落、ドル円も一時100円を割る事態となった。
背景には国民の「移民」に対する反対姿勢だ。
EU加盟国は移民を拒めないとの条項があり、英国も同様の形であった。これにより移民が増えることにより「職が失われている」という危惧を持つ世代、移民に対する税支出増加による「財務状況の悪化」とそれに伴う福祉・厚生削減を危惧した世代が自国の「主権」を守るために反対に投票をおこなった。
またロンドンでは移民が「モスク(イスラム教における唯一神・アッラーに礼拝を求めるための施設)」建設を巡り摩擦が続いている状況であったこともあり、EU離脱国民投票というよりは「移民を受け入れ続けるか、否か」を問う代理投票であったといえる。
影響は限定的だが英国以外のEU加盟国の動向に注意
結論をいってしまえば、結果は限定的である。それはマーケットをみても明らかで、離脱の結果が発表された当初こそ大きく下げたものの、株価も為替も安定を取り戻しつつある。
ただし安心するのはまだ早い。英国のEU脱退をうけ、EU加盟国の中にはいわゆる「離脱派」政党が勢いをましている。また結果を受けてスコットランドでは「(離脱を問う)国民投票を行うべきだ!」との声も強まっており、火種は依然として残っている。そのため、このタイミングで運用を行う場合にはリスクを通常より大きく見積もる必要がある。