グローバルな景気・マーケットの不安定感が高まる局面で、日本の通貨である円は、安全資産として買われやすい。では、日本の財政状況は極めて悪いと言われ続けてきたにもかかわらず、なぜ円が安全資産であり続けているのか考える。
国内の所得を維持する財政支出が必要な状況か
民間投資が国内民間貯蓄を上回り、財政支出が大きく財政赤字であれば、国際経常赤字となる。そのような状態が続けば、政府の純債務残高(GDP比)が上昇するとともに、海外からの借り入れも大きくなり、対外純債務残高(GDP比)も上昇していく。
一方、国内経済が成熟化し、国内貯蓄が潤沢で、投資需要が小さければ、国際経常黒字が継続し、海外への貸付が大きくなり、対外純債務残高(GDP比)は低下する、または対外純資産残高(GDP比)が上昇する。
もし、国内の投資需要と海外からの資金需要の合計が国内貯蓄より小さければ、国内の所得はそれが釣り合うところまで減少してしまうことになる。その足りない分だけ、財政支出が増加すれば、国内の所得を維持することができる。
裏を返せば、そのような状態であれば、市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、そして貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止を目的とした財政支出の増加の余裕があるということになる。実際に国が豊かになるとともにそのような財政支出が増加する傾向がみられ、社会厚生は拡大し、対外純資産残高(GDP比)が上昇するとともに、政府の純債務残高(GDP比)も上昇していくことになる。