複数のファクターが「日本円」を安全資産に押し上げる

横軸に対外純資産残高(GDP比)をとり、縦軸に政府の純債務残高(GDP比)をとれば、スマイルカーブ(U字型)になると考えられる。多くに国々を集めて、グラフをつくってみると、確かにしっかりとしたスマイルが確認できる。

左の方は、対外純債務残高(GDP比)が大きく、政府の純債務残高(GDP比)も大きい国々となる。例えば、ギリシャなどがその代表例だ。

一方、右の方は、対外純資産残高(GDP比)が大きく、政府の純債務残高(GDP比)が大きい国々となる。日本はこちらに入っている。対外純資産残高(GDP比)が大きく、政府のネット債務残高(GDP比)が大きいということだ。真ん中あたりは、両者がバランスしている国々となる。

このスマイルカーブを、より直感で理解しやすいきれいな直線にする方法もある。

左の方の国々は国内所得に対して国内支出が大きく家計の純資産の蓄積は小さいと考えられ、右の方は国内所得に対して国内支出が小さく家計の純資産の蓄積が大きいと考えられる。横軸に対外純資産残高(GDP比)をとり、縦軸に政府の純債務残高(GDP比)と家計の純資産残高の差をとれば、予想通り右下がりのきれいな直線となる。

左上の方の国々は財政問題が深刻であり、右下の方は財政問題はそれほど大きくはないことを意味し、単純に政府の純債務残高だけでは比較できないことを示している。

もちろん日本は、家計の純資産と比較した政府純債務残高が小さく、対外純資産も大きい、財政問題がそれほど大きくない右下に属する。右下の方のフロントランナーはスイスと日本であり、グローバルな景気・マーケットの不安定感が高まる局面でスイスフランや円が安全資産として買われる理由であろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

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