米国の不動産投資に転機が訪れているようだ。これまで外国の投資家に人気だった高級不動産に代わり、価格帯が低めの中級不動産の需要が伸びている。

投資先もニューヨークやサンフランシスコを含む不動産価格が高騰している土地から、南東部(フロリダ州、ジョージア州、ミシシッピ州など)や中西部(オハイオ州、ミシガン州、アイオワ州など)といった、手ごろな価格で物件が購入可能な土地へと、シフトしていっているという。

主な要因としては、長引いていたドル高のほか、米国で不動産価格が過剰に上昇したことなどが挙げられている。

カナダ人の3倍米物件を買い上げている中国人富裕層

こうした変化が目につき始めたものの、昨年4月から今年の3月にかけて、不動産セールス自体は2009年以来最高の販売を記録しており、1026億ドル(約10兆3143億円)が海外不動産投資家から流れ込んでいることが、全米リアルター協会(NAR)のデータから判明している。

以前の集計と比較すると1.3%の減少が見られるが、取引件数自体は増加傾向にあり、この期間中に21万4885件(2.8%増)が海外投資家の手にわたっている。

この数字の差異は、投資家を含む買い手のの関心が、一等地から二等地へと移行し始めていることを示す。

最大の買い手である中国人投資家の間でも、昨年から不安定な状態が続く中国経済の影響か、やはり若干の買い渋りが見られる。

それにも関わらず、二番手のカナダ人投資家の約3倍(273億ドル/約2兆7445億円)という巨額の不動産購入資金が中国から投じられており、中級物件の価格帯では最高額となる54万2084ドル(約5億4508万円)を支払った中国人投資家もいたそうだ。

近年富裕層が急増している中国では、人口の約380分の1に値する361万人以上が、富裕層に属すると報告されている。

それだけ多くの層が海外投資を楽しめる資産を得たわけだが、アジア圏の物件は非常に割高だ。中国を始め、台湾、シンガポール、香港など、米国に比べて軒並み価格が跳ねあがる。それに加えて物件の規模や選択肢の多さなど、米不動産が中国人投資家を惹きつけてやまない理由がここにある。

また米ドルに対して人民元が弱い状況がここ数年間続いているが、5年前や10年前ほど圧迫されているというわけではない。そのため今後も長期間にわたって、米不動産が中国人投資家を魅了し続けると見られている。