選挙,過半数,政策
(写真=PIXTA)

参議院選挙が7月10日に投開票となり、自民・公明の連立与党が非改選議席の76と合わせ、議席が146(追加公認を含む)と過半数を維持した。政権にとって参議院の重要性は大きくなかった。

強まる政権与党の推進力

世論の支持を背景として、秋の臨時国会でTPP関連、景気対策、労働基準法改正、そして消費税率引き上げ再延期などの重要法案を通す動きは、円滑になるとみられる。安倍首相は、消費税率引き上げの2017年4月から2019年10月への延期、選挙後の臨時国会で大規模な景気対策の実施、それによるアベノミクスの更なる推進の方針を明らかにした。その方針の国民の信任を確かなものとするため、安倍首相は改選議席の過半数の獲得を目標としてきた。

結果は、安倍首相の経済方針は国民に信任される形となった。8月頃の概算要求から始まる2017年度の予算編成では、アベノミクス色が強くなるなると考えられる。今回の選挙で、自民党の参議院単独過半数にはわずかに届かず、連立与党の大勝は公明党との強い選挙協力の結果である。連立与党内での公明党の一定の力は維持されるだろう。

選挙戦を有利に導いた自民党、ぼやけた争点と国民の危機感

ほとんどの政党が消費税率引き上げ見送りの方針であったので、選挙の争点とならなかった。野党は憲法改正を争点としたいと考えていたようだが、自民党は早急な憲法改正を政策の前面に押し出さなかった。

結果として、争点はアベノミクスの政策手法の是非という包括的なものとなった。有効求人倍率の上昇と失業率の低下、そして税収の増加によって、民主党政権の時より経済状況が好転しているのは否定のしようがない。今回から投票できることになった18-19歳も、新卒採用状況の著しい改善を感じ、アベノミクスへの支持は大きかったとみられる。野党の批判はあるが、縮小を続けてきた総賃金はアベノミクスにより拡大し、2002年以来の水準まで回復したのは事実だ。野党は、アベノミクスに代わる経済再生の有効な手段を提示できなかった。具体的な政策の是非ではなく、アベノミクス全般の是非というぼやけた争点になったことは、連立与党には有利に働いた。

英国のEU離脱問題などによるグローバルな景気・マーケットの不安定感は、国民に経済対策の早急な具体化を争点として重要視させただろう。5月のG7で前のめりにグローバルな経済危機のリスクを強調し、景気回復の促進のため財政政策を機動的に使うという、合意を勝ち取った安倍首相の評価も上がった。円高のリスクもアベノミクスを再稼動させなければならないという、国民の危機意識につながったとみられる。