2016年第2四半期、ベンチャー投資総額の39%に相当する87億8000万ドル(約8840億5820万円)がユニコーン(時価総額10億ドル以上の未上場企業)に投じられたことが、PicthBook Dataの調べで分かった。40億6000万ドル(約4088億140万円)だった前年同四半期から、20%増えていることになる。

その一方で、投資件数は38%減っており、小規模なスタートアップへの投資が下火になりつつあることも分かる。

スタートアップというだけで投資家が飛びついていた時代は完全に終結し、「すでに一定の実績と経験を積み上げたスタートアップを厳選する」という投資スタイルへのシフトがうかがわれる。この点で、ユニコーンという立場は有利に働くわけだ。

投資家が量より質に移行 実績が問われる時代に

テクノロジーの波にのって一世を風靡したユニコーン投資。誰もかれもがこぞって設立間もないスタートアップに大金を投じ、「ユニコーンバブル」という流行語まで生みだした。

しかし昨年後半から急激に失速し、ベンチャー投資自体に陰りが見え始めた。中国が引き金となった市場パニック、原油の値崩れなどの影響が、ユニコーンを筆頭とするスタートアップ市場の転機となったようだ。

それまでは天井知らずだったスタートアップの時価総額に対し、「本当にそれだけの価値があるのか」という疑問の声があがりはじめたのもこの時期だ。提示すべき過去の実績がないスタートアップへの投資には手探りな部分が多く、常に高リスクをともなうという当然の原理に、誰もが初めて気がついたといったところだろうか。

バブルを弾けさせない手段として、投資家が一斉に財布のひもを締めなおしにかかったことで、本当に実力のあるスタートアップだけが生き残れる環境に、市場がシフトする。事業を設立したばかりのスタートアップにとっては残念だが、早期にチャンスを与えられる機会が減少し、地道な下積み時代の幕開けとなった。

PitchBook Dataのシニア・アナリスト、ガレット・ブラック氏は、スタートアップの選択に厳しくなった投資家が、リスクから安定性重視に移行していると指摘。

例えばアクセル・パートナーズやインサイト・ベンチャー・パートナーズといった米ベンチャー・エクイティ会社は、投資するスタートアップ数を減らし、代わりにより多額の資金を小さな枠組み内で、確実に利益を生み出すユニコーンに投じているという。