働き方改革はどこに向かうのか

◆働き方改革の潮流~移行と多元化

働き方改革についてこれまで述べてきたことをまとめると、図表5のようになる。

働き方改革が進めば、従来一般的だとされてきた時間制約のないフルタイム勤務は、全体としては時間制約のあるフルタイム勤務の方向に向かうはずである。ただ、働き方改革の推進度合いは企業や職場によって相当異なる。時間制約のあるフルタイム勤務にどこまで近づくか、バラツキが生じるという意味で、フルタイム勤務者の働き方の多元化は進むと考えられる。

一時的な事情(育児等)による短時間勤務の場合は、もともと、いずれはフルタイム勤務に復帰することが想定されている。このようなケースにおいて、短時間勤務者が増加し、利用が長期化することは、短時間勤務者のキャリア形成の面でも、企業の業務マネジメントの面でもマイナスの影響が懸念される。また、短時間勤務者が抱える事情はさまざまであり、そもそも一律的な短時間勤務の適用が実態にそぐわない面もある。

こうしたことから、企業は、短時間勤務の期間上限までの利用を前提とするのではなく、制度利用に当たって、キャリア形成への影響も含めた制度利用のメリット・デメリットを考慮することを、社員に求めるようになるであろう。既に、企業のなかには、キャリア研修の一環として、育児休業や育児のための短時間勤務の利用について考える機会を、設定する事例が少なからず出てきている。

また、短時間勤務者が増加するほど、企業としては、短時間勤務者への一律的な配慮から、個別事情に合わせた配慮へと転換し、さらには可能な範囲でのフルタイム勤務への復帰や、夕方や夜のシフト勤務への部分的な配置等を求める方向に向かうことになろう。たとえば短時間勤務者が多い病院や保育・介護施設等では、既にこのような取組を行っている事例が少なくない。

結果として、一時的な短時間勤務者についても、全体としてはフルタイム勤務(時間制約あり)への移行に向かうが、短時間勤務者の個別事情には配慮されるという意味で、短時間勤務者の働き方も事情によって多元化することになるだろう。

このように、働き方改革によって、時間制約のあるフルタイム勤務へと働き方が移行していけば(多元化を伴うので、全てが移行するわけではないが)、従来は時間制約のないフルタイム勤務者に集中しがちであった責任や負担の大きい主要な仕事が、時間制約のあるフルタイム勤務者や短時間勤務者に分散することも期待される。

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