安全ピン,マタニティマーク,サイン
(写真=PIXTA)

いまだ世界の注目を集め続けるBrexitだが、歴史的な国民投票以降、ある現象が起きているという。洋服に安全ピンをつける英国人が増えたというのだ。

安全ピンをつけて、人種差別反対の立場を発信

この安全ピン、発端はBrexit直前から人種差別的な嫌がらせ行為が、急増し始めたことだった。6月23日の国民投票の翌週には、被害報告が前週よりも57%も増加している。主にイスラム教徒の女性に被害が集中しているというが、ポーランドやオーストリアといったEU加盟国からの移民にも被害は広がっているという。

これらの移民を保護する目的で、各メディアが呼びかけたのが「安全ピン・サポート」だ。元々のアイデアはTwitter上での呼びかけである。世界中のユーザーに協力を求めたのが、SNS上でアリソンと呼ばれる米国人女性だ。

浸透度は地域によって異なる?

実際にどのくらいの英国民が、安全ピンをつけて歩いているのか。正確な数字については報告されておらず、英国内でも地域によっても反応は様々なようだ。

少なくとも筆者の街は、比較的移民が少なく穏やかな観光地のせいか、安全ピンが話題にのぼることも稀だ。国内・海外から大勢の観光客が訪れているが、注意して観察してみても、安全ピンを見かけることはない。筆者の知る限り、安全ピン・サポートについて認識していない住民も多い。

一方で、ロンドンに代表される移民の多い街では、学生などを中心に安全ピンをチラホラ見かけるという。中でも、イスラム教徒の移民が多い地域が多いようだ。

人種差別が深刻化している地域ほど、安全ピンが浸透しているのではないかと推測される。Brexitによって激化した人種差別自体が、地域に占める残留派と離脱派の割合によって左右されていても、決して不思議ではないだろう。

小さな自己主張アイテムは世界的にも広がりやすい

安全ピン・サポートに限らず、英国でも様々なメッセージを発信する手法が確立されている。

最も有名なものは、「ポピー・アピール(Poppy Appeal)」だ。毎年、第一次世界大戦の終戦記念日である11月11日になると、胸に赤いポピーのコサージュをさした人々が街中に溢れる。この日を「Remembrance Day(リメンバランス・デー/戦没者追悼記念日)」とし、戦死者に礼を尽くし、戦争の教訓を活かす意図で、英国在郷軍人会が開催している。

女性に人気があるのは、米国から広がったといわれる「ピンク・リボン・ピン(Pink Ribbon Pin)」。可愛いデザインのブローチで、こちらは乳癌の意識向上を目的としている。日本でも、ピンクリボン運動としてキャンペーンが行われているので、ご存じの方も多いだろう。

「象徴となる物質的な媒体を通して、信念を体現する」という発想に、英国を始め、世界中で共感を覚える人々が多いということだ。