photo:Vintage Investing / StockMonkeys.com
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日本と米国の資産運用の特徴

日銀が3月25日に発表した25日に発表した2013年10─12月期の資金循環統計によると、日本の個人金融資産1,645兆円にのぼっています。またその内訳をみると、現預金53%、株式・投信14%となっています。一方、米国の個人金融資産の構成比は、現預金13%、株式・投信45%です。米国の資産運用では、リスク資産の割合が高いことが特徴です。一方、日本では、現預金や元本確保型の金融商品が好まれ、株式や投信信託などリスク金融資産での運用が進んでいません。

日米比較:リタイア後の夢や生活レベル

少し古いデータなのですが、2004年に日興コーディアル証券が『日米の55~69歳の主婦に聞く「リタイア後の生活費と資産運用」日米比較意識調査』レポートを発表しています。その中で、日本の主婦の4人にひとりが、リタイア後の生活について、「憂鬱だ」と答えたのに対して、米国の主婦の3人に2人が、リタイア後の生活について、「楽しみにしている」と答えています

また、当レポートでは、リタイア後の夢について、米国の主婦がリタイアを軌に夢の実現を図りたいと回答したのに対して、日本の主婦は、生活レベルの現状維持を答えています。日本の主婦は、現在の資産レベルからリタイア後には「ぎりぎり」「そこそこ」になりそうだと予想していると言えます。

とはいえ、平成18年版「国民生活白書」では、高齢者の消費意欲が以前に比べて高い傾向が見られると、報告されています。高齢者の月別消費金額は、年を取ればとるほど低下傾向にあるわけですが、近年は、低下する度合が緩やかになっているのです。年齢を重ねても消費意欲が衰えなくなっていると言えます。また、旅行、趣味・習い事、健康・スポーツへの支出は、50歳代の4割前後が「大幅に増える」か「多少増える」と回答しており、教養や娯楽に積極的に支出する意欲が強いです。

日米比較:リタイア後の生活費の原資

上記の「日米比較意識調査」では、リタイア後の生活費に充てたいと思う資金の出所として、公的年金・企業年金(日本 86.3%、米国 66.5%)、預貯金(日本 67.7%、米国 39.0%)、個人年金(日本 46.0%、米国 40.0%) (括弧内は回答者の割合)となっており、日本はコツコツ貯めた預貯金を取り崩す意向が米国よりも強いことがわかります。米国は、預貯金を取り崩さす、幅広い生活費の原資をもつことに特徴があります。

上記の「国民生活白書」を読むと、高齢者が完全リタイアするまでの収入の内訳がたいへん興味深いです。月間実収入の内訳は、次のようになっています。世帯主60~64歳:勤務先 57.3%、公的年金 21.8%、預貯金取り崩し11.6% であるのに対して、世帯主65~69歳:勤務先 25.1%、公的年金 43.8%、預貯金取り崩し23.6% です。さらに、世帯主70~歳:勤務先 11.4%、公的年金 58.1%、預貯金取り崩し22.9% となっています。すなわち、日本は米国よりも、預貯金の取り崩しの意向は強いのですが、それでも、リタイア後の生活費に占める預貯金の取り崩しの構成比は3割程度になるのではないかと推測されます。

日米比較:確定拠出年金401K

米国では、1978年、一定要件を満たす確定拠出年金の掛け金に対して所得控除を認める確定拠出年金401Kが始まりました。大企業を中心に普及し、2012年時点、米国の401Kの加入者数は、約 7,343万人となっています。

一方、日本では、2014年3月末時点、確定拠出年金の加入状況は、企業型401Kが18,393社、約464万人、個人型401Kが約18万人となっています。右肩上がりで、加入者が増え続けていますが、まだ普及度が高いとは言えません。また、401Kで選択される金融商品の50%以上が元本確保型商品となっており、投資信託などリスク商品が選択されることが少ない状況です。

日本の資産運用は変わっていくのか:NISA、GPIFの動向など

さて、日本の資産運用は変わっていくのでしょうか?

「貯蓄から投資へ」の流れが、広がっていきつつあるように見えます。個人については、少額投資非課税制度(NISA)が今年から開始され、株式や投資信託で資産運用する人が増えてきています。対面営業の大手証券会社5社とネット証券5社が顧客から預かっている資産は2014年3月末時点に約257兆円と、過去最高を更新しています。また、個人の証券口座数も増加しています。3月末時点で、上記10社合計で2,191万口座と、前年同期比104万口座増えています。新規にNISA口座を開設した人には多くの投資の未経験者も含まれます。

年金資金についても、これまで債券投資をメインとする運用スタイルから株式の比率を高めた運用へと、変わっていこうとしています。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産構成の比率を見直す動きが出てきております。2013年12月末時点のGPIFの資産構成は、国内債券55%、国内株式17%、外国債券10%、外国株式15%となっております。昨年11月に有識者会議で国債中心の運用からの転換を提言されており、さらに、4月22日、厚生労働省がGPIFの運用委員に有識者会議のメンバーを務めた米沢康博早大大学院教授を任命したことから、運用の見直し、すなわち債権から株式への流れが加速する可能性が高まったとみられます。

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