空家活用
(写真=PIXTA)

今、空家が増えている。野村総研の調べによると、2013年に全国で約800万戸程度あった空家が、2033年には2000万戸超になると見られ、わずか20年で約2.5倍にまで増える予想だ。また総務省の2014年データによれば、東京都内でも既に、およそ10軒に1軒は空家であるというデータもある。

このように「空家や空地」の問題は、一般的に景観や治安・衛生面などへの懸念が指摘されるが、根本的な問題はむしろ、空家・空地の所有者が、無駄に固定資産税などの税金を払っているという資産のロスにあるのではないだろうか。

固定資産税の垂れ流し……「空家」への課税強化。課税額は従前の約6倍に

空家を所有していることがいかに経済的ロスを生むことになるのか? 実例でみてみよう。たとえば東京都杉並区久我山に戸建を所有し、居住していると仮定する。久我山といえば京王井の頭線で渋谷までわずか急行で14分と便利で人気の住宅地だ。

この場所に、「土地面積約50坪、建物面積約35坪(築年数30年・木造2階建)」の戸建を所有している場合、その固定資産税は年間で約16.7万円(土地約12.5万円+建物約4.2万円)。月あたりに換算すると、約1.4万円程度となる計算だ(※建物は固定資産税評価額を約300万円とした場合で算出)。

ところがこれが誰も住んでいない空家となると話は別。ある一定要件に達した「特定空家」に指定されると、土地の課税金額は6倍となり年間約75万円、前述の建物の課税金額と併せて年間合計約80万円。月あたり何と約6.7万円にまで膨れ上がるのである。

これには昨今、空家が増加しているご時勢において、政府が空家に対する課税を強化することで対策を講じているという背景がある。従来建物がある土地は、更地と比べて土地の課税金額が1/6に減免されたが、2015年の法改正により、建物があってもそれが「特定空家」に指定された場合は、更地同様の扱いを受け、1/6の減免が適用されなくなったのだ。

これだけの税金を垂れ流しているとしたら……。ご自身を含め、身の回りにこのようなケースは存在しないだろうか。

さらに相続税まで……「空家」への課税強化は続く

さらに「空家・空地」問題を放置してはいけない税制上の理由の一つとして「相続」がある。相続で財産贈与を受けると、相続税がかかることは常識であろう。しかし相続税を払えないため、住んでいる家や土地を売る……、そんな事態を避けるために「小規模宅地等の特例」というものがある。

故人(遺言者)と一緒に生活していた家族がその家を相続する場合、一定の要件を満たすと土地の評価額を1/5に減額してもらえる。つまり5000万円の土地なら、1000万円として税金を計算してもらえるのでこれは大きい。しかし「小規模宅地等の特例」は「空家」だとこれまた適用されない。当然その分、税金は高くなる。

分かっていても相続対策をしていない人は意外と多い だから「空家」が増える?

そもそも建物・土地の権利については、家族・兄弟間での共有、他人との共有など関係が複雑なことが多く、仮に売却するとなると調整は実に煩わしいことになる。こうしたことが「相続=争族」といわれる所以(ゆえん)だ。

ところが、もめるかもしれないと容易に想像できるのに、早めに対策をしている人は決して多くない。相続税の課税対象を拡大する相続税法改正が行われた2015年、ある保険代理店が行ったアンケート(40-60代の男女計500人対象)では、相続について相談したり調べたりしている人はわずか7%に過ぎなかった。また別の住宅メーカーが行った調査では、将来「親の家を相続するが、住むつもりはない」と答えた人が23%、「わからない」の29%と合わせると、半数以上が“空家予備軍”と考えられる。

そんな中最近、相続税対策として「賃貸経営」を考える人も多い。たしかにメリットもあるが、慎重に考えたほうがよいかもしれない。賃貸用物件の着工はこのところ増えていて、そこには相続税の評価額を下げようという意図が透けて見えるが、必ずしもうまくいくとは限らない。そもそも賃貸経営をするためには、自費でアパートを建設し、賃料にて建設費を返済していく。つまりは、大きな借金を背負うことになるのだ。また家賃保証を提供している会社もあるものの、相手方の経営状況によっては保証されないケースもあり、逆に“空家を抱える”かもしれないことは忘れてはいけない。さらに満室稼働させるためには定期的な修繕費用もかかり、それも馬鹿にならない。そして、何よりアパートにしてしまうことでさらに相続を難しくしている。簡単に言えば、現金は分けられるが、アパートや土地は分けられないのだ。

以上の点から、空家、空地などの遊休不動産をどうするか――たとえ現在使っている土地や建物であっても――相続する可能性があるなら、早めに専門家に相談しておいたほうがいいのは間違いなさそうだ。

大手総合不動産デベロッパーに相談するといい3つの理由

いざ相談しようとすると、 “誰に相談すればいいのか”という問題に直面する。一般的には、「地元の不動産業者」に相談するイメージが強いだろうが、「大手総合不動産デベロッパー」に相談するというのも選択肢のひとつである。

さきほど述べたように「相続=争族」といったように、土地の権利関係についてはもめるもの。家族や親族との調整が必要なことが多い。その点、大手のほうがノウハウやスタッフも豊富で、複雑なケースでも、細やかに対応できるといえる。

次に、総合デベロッパーは戸建に限らずビル・マンションなど幅広い事業を展開しているので、土地活用についていろいろな用途で検討してもらえる。売る側にとっては、土地の形状・規模問わず、買ってもらえるチャンスが広がるといえる。

さらに、総合デベロッパーの中には、直接買い付けしているケースもあり、いわゆる仲介業者に依頼した際に発生する仲介手数料も発生しないというメリットもある。

こうしたメリットを享受できる選択肢のひとつが、住友不動産だ。約60年を超える実績を持つ業界最大手である同社は、全国・首都圏でのマンション供給戸数2年連続1位になるなど、マンションでの実績はもちろん、オフィスビルに注文住宅・リフォーム事業にも注力している。空家や空地の利活用については、30坪程度の広さの土地から検討しており、直接購入するため仲介手数料が不要だ。親族など関係者との面倒な調整も、経験のある担当者が丹念に話し合うことでまとめているらしい。

夏、この時期だから考えるべき?

季節は夏、もうすぐ迎える盆には帰省する人も多いだろう。たとえ自分が土地を持っていなくても、身近にそういう人はいないだろうか? 家族や親族で、相続などで得た土地がいまだに遊休地化している、また例えば都心の一等地に戸建を持っているが誰も住んでいない……などというケースはないだろうか?――もし心当たりがあるなら、早めに相談するよう助言してあげたほうがよいのでは。来るべき時に備えて、こんな時期だからこそ将来について考えてはいかがだろうか。