財政政策,日銀,自民党
(写真=PIXTA)

日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円程度増加させる、量的金融緩和策を実施している。その資金供給により、マーケットで間接的にネットの資金需要(企業貯蓄率と財政収支の合計)をマネタイズしていることになる。負債の直接引き受けではないため、マネタリーベースの増加額の半分程度の40兆円程度(GDP対比8%程度)のネットの資金需要を、マネタイズする力があるとも考えられる。

デフレ期待の完全払拭には、早急な財政支出の増加が必要

日銀がマネタイズする体制を整えても、ネットの資金需要が存在しなければ、量的金融緩和の効果は限定的になってしまう。

2000年代はネットの資金需要が消滅してしまっていて、量的金融緩和の効果は小さかったと考えられる。一方、アベノミクス開始前後では、循環的な景気回復などによる企業貯蓄率の低下とともに、震災復興とアベノミクスの経済対策で財政政策が緩和された。それによって、ネットの資金需要が復活し、金融緩和の効果が強くなり、デフレ完全脱却へのモメンタムが生まれた。

しかし、その復活したネットの資金需要は15兆円程度(GDP対比3%程度)でしかなく、日銀のGDP対比8%程度のマネタイズする力と比較すると小さい。しかも、グローバルな景気・マーケットの不安定感を警戒した企業行動の慎重化(企業貯蓄率の短期的なリバウンド)と、消費税率引き上げと税収の大幅増加、そして歳出の抑制などにより財政が過度に緊縮気味となり、現在はネットの資金需要が消滅してしまっている。

確かに、デフレ完全脱却への日銀のコミットメントへの信任を維持するため、期待に働きかける金融緩和は重要であろう。しかし金融緩和には、更なる円高やデフレ期待の再燃を阻止するという、ダウンサイドを抑制する効果しか、もはや期待できないだろう。

実際に金融緩和の効果を強くし、デフレ完全脱却へのモメンタムも強くするというアップサイドのために必要なのは、更なる金融緩和よりも、財政拡大などによるネットの資金需要の拡大であると考えられる。

国民不安を解消し、前を向いて進みだせる環境を整え、デフレ期待を完全に払拭するために、市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、そして貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止を目的とした財政支出を早急に増加させる必要があろう。