お盆休みや年末年始などの際に、実家に帰省する人も多いことでしょう。特に実家が遠方にある人にとっては数少ない帰省の機会ですから、そのタイミングで親を交えて「実家の遺産・相続」について話をしようと思っている人もいるかもしれません。
しかし、遺産や相続の話は、「親の死」が前提ですから、なかなか子どもから切り出しにくいものです。そこで、どのようなきっかけで、どのような話をしたらいいか、詳しく説明します。
「終活」の話をしてみる
「終活」という言葉は、今ではすっかり市民権を得ています。「終活」とは、生前に自分で葬儀や墓などの準備、財産や身の回りの物の整理を行い、さらに自分が亡くなった後に相続が円滑に進められるように計画を立てておくことです。
現在、各自治体やNPO法人などの主催で、終活セミナーが実施されているため既に参加している可能性もあります。また実際に参加していなくても、友人・知人が参加していたり、あるいは終活について興味を持つ同年代の友人たちと話をしたりしているかもしれません。
久しぶりに実家に帰ってきて、いきなり「『終活』のことだけど…」と切り出しても、親は面食らってしまいます。そこで、「終活」の際に使われている「エンディングノート」を話題にするという方法はいかがでしょうか。
「エンディングノート」とは、一般的に「高齢者が自分の終末・死に備えて、自分の希望を書きとめておくノート」のことです。セミナーを行う自治体、NPO法人、保険会社などが、それぞれ独自に作っていますし、書店や文具店で販売されていたり、インターネットでダウンロードしたりできます。多くのエンディングノートに共通している項目は次のとおりです。
・ 基本情報(氏名、住所、現在かかっている病気・病院など)
・ 自分史(今までの経歴、配偶者・子どもとの思い出など)
・ 親戚、友人、知人リスト(家系図、よく連絡をとっている人など)
・ ペットについて(かかりつけの獣医、ペット保険、自分に何かあったときの対応など)
・ 財産や貴重品に関すること
・ 生命保険、年金のこと
・ 自分に介護が必要になった時に希望すること(資産管理者の指定など)
・ 病気になった時の延命措置を望むか
・ 相続に関する考え方(形見分け遺産の整理、遺言書の有無、相談先など)
・ 自分の葬儀に希望すること(参列者、形式、希望する埋葬など)
ただ、項目を見ると分かると思いますが、「基本情報」から「葬儀に関すること」という重い項目まで並んでいます。初めは「何かあった時のために」という表現を使って、「基本情報」から「ペットについて」くらいまでを書いてもらう方向で話をした方が無難でしょう。
1度の帰省で、全項目を書いてもらうというのはまず不可能でしょう。そのため、時間をかけて、帰省の度に「エンディングノート」を話題にして少しずつ項目を埋めていくという方法が良いのではないでしょうか。