スイスの大手金融機関クレディ・スイスが、米国の超富裕層を対象にした投資銀行の立ち上げ準備にはいったことが社内メモから明らかになった。
従来のウェルス・マネージメント事業とは一線を置き、融資や資本市場、M&A関連のアドバイスに焦点をあてた路線を予定しているという。
昨年、米国のプライベート・ウェルス・マネージメント業務から撤退した後だけに、戦略を練りなおしての再進出といった気迫が感じられる。
コスト削減だけではなく、最大限の利益創出を目指す
今回の動きから、金融機関の顧客層が多様化する中、クレディ・スイスが世界各国で増加中の超富裕層顧客の獲得に専念しようとしていることがわかる。
背景には昨年6月、新たに就任したティージャン・ティアムCEOによる大規模な事業再編があり、継続価値の低い事業の縮小を図る一方で、利益創出に大きく貢献する分野を押し広げる意図だ。
クレディ・スイスは今年2月、2015年第4四半期の58億スイスフラン(約6017億5295万円)という純損失がひびき、通期決算がリーマンショック(2008年)以来の赤字となった事実を報告。2016年第1四半期も積みあがった非流動資産のポジションが要因となり、二四半期連続の赤字を記録した。
そのしわ寄せは、コスト削減というお決まりの手段で補われることになる。削減されたのはいうまでもなく従業員だ。今年にはいってロンドン、ニューヨークを中心に、すでに6000人の人員削減を実施している。
こうした犠牲を支払った代償としてか、意外にも第2四半期には純利益10億5100万スイスフラン(約1090億4178万円)で黒字復帰。
しかしティアムCEOの再編戦略はコスト削減にとどまらず、最大限の利益創出という方向を目指している。