「史上最も暑い夏になる」。甲子園やオリンピックのキャッチコピーではなく、NASAが発表した今年の夏の見通しである。ラニーニャ現象が発生し、雨が少なくカラッと晴れた猛暑になるという。確かに梅雨が開ける前から暑く、関東の水瓶も平年の6割ほどの貯水率で、大いに心配されている。

値上げの2016年、アイスクリームに投資のチャンス?

これだけ暑いと、夏のひんやりデザートの代表・アイスクリームが登場する機会も増えそうだ。2016年はそのアイスクリームに、原材料価格の高騰の余波が押し寄せている。「ガリガリ君」で知られる赤城乳業は、25年ぶりに商品価格を見直し、値上げに踏み切った。さらに同社の「スーパーソフトチョコバニラ」は、バニラやカカオなど原材料価格の高騰で、値上げの憂き目にあっている。

冬アイスとして寒い季節にも人気のアイスクリームだが、やはり夏の暑さとともに消費量が伸びる傾向にある。日本アイスクリーム協会の調査によると、好きなデザート調査では、2位のチョコレート、3位のケーキなどを大きく引き離して、1位に選ばれた。さらに好きな味を尋ねたところ、トップ10は以下のような順位となった。

1位 バニラ
2位 チョコレート
3位 抹茶
4位 ストロベリー
5位 ミルク
6位 クッキー&クリーム
7位 あずき
8位 キャラメル
9位 コーヒー
10位 桃

バニラは過去の同じ調査でも1位に選ばれるなど、圧倒的な人気を誇る。定番だ。そのバニラをはじめ、チョコレートの原料となるカカオ、フレーバーとしても人気のコーヒー、井村屋の「あずきバー」を連想させる小豆の価格が値上がり傾向にあり、各社の製品で値上げが相次いだ。

個別投資は難しい? 原材料投資のリスク

価格高騰が特に顕著なのがバニラだ。日本国内で消費される大部分の輸入元であるアフリカ・マダガスカル。世界有数のバニラビーンズの生産地だが、近年は気候変動の影響などから不作が続いており、2016年の収穫量は昨年より30%以上落ち込んだ。厳しい収穫状況を受け、バニラ価格はこの5年ほどで約10倍に跳ね上がっているという。

大幅な値上がりを見ると、投資心に火が付きそうだが、これらの原材料商品は、流動性の高い原油や穀物などのコモディティとは少し事情が異なる。コーヒーやカカオは投資対象として取り込まれているが、バニラは投資の対象に組み込まれておらず、一般投資家が投資できる機会がないのが現状だ。

またバニラの商品価格を巡っては、天候が安定し、豊作で需要を上回ると、価格が落ち込むリスクがある。一方で、生産国が限られているため、ひとたび政情不安が発生すると、商品市況にも大きな影響を及ぼすリスクもあるのだ。

新興国をはじめとして、バニラ、コーヒー、カカオなどの消費は、引き続き堅調に推移するとみられ、力強い需要が価格を下支えしそうだ。また、気候変動による不作は供給面からはマイナス要素だが、投資の面では、供給が抑えられることによって、価格が釣り上がるチャンスともなりうる。気をつけなければならないのは、ドル建てで取引されている場合、為替相場の影響も受ける点だ。