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THE Sun(画像=Webサイトより)

8月8日に行われた天皇陛下の「お気持ち表明」は欧米でもトップニュースとして扱われた。

各メディアは“Japanese Emperor, Akihito”が高齢、二度の手術による体力の低下から、君主としての役割に肉体的な負担を覚えていること、自国と自国民への影響を懸念していることなどを含む天皇陛下自身の心境、悠仁親王誕生まで議論の中心となっていた、女性の皇位継承を含む日本の皇室典範改正問題、安倍政権周囲に漂う生前退位反対論など、広範囲にわたって今回の出来事を報じている。

欧米メディアに共通する潜在的な関心は、天皇陛下の退位そのものよりも、むしろ「退位後の日本がどうなるのか」という一点に向けられているという印象を、英国在住の筆者としては受けた。

生前退位が認められている欧州君主国

欧米のメディアはおおむね、天皇陛下の意向に理解を示す反応を見せているようだ。

そもそも同様に君主制の残る英国、ベルギー、スペイン、オランダ、イタリアなどの欧州国では、生前退位が認められていることから、「なぜ日本では天皇陛下が自らの意思で退位できないのか」を読者に説明すると同時に、「法律で生前退位が認められていない」という問題の根底自体に、疑問や反感が見え隠れしている。

近年の例を挙げると、2014年に退位したスペインのファン・カルロス前国王を筆頭に、オランダでは2013年に退位したベアトリクス前女王を含め、その母であったユリアナ前女王、祖母ウィルヘルミナ前女王などが、3代続けて王座を娘に譲位している。

「多くの日本国民は天皇陛下の意思を尊重している」と報じる一方で、皇室の伝統厳守に固執する日本会議を中心に猛反対の声があがっているため、「天皇の意向が受けいれられる可能性は低い」という見方が強い。

欧米メディアの強い関心は日本の軍事力強化の可能性

「(第二次世界大戦後の)天皇の政治的権限の失効は、日本人に天皇が神ではないという事実を認識させた」という出だしで始まる米ニューヨーク・タイムズ紙の記事は、それにも関わらず日本国民は天皇を国の象徴として崇め、それがゆえに「退位を許されない」と辛口だ。

しかしそれは第二次世界大戦後、平和主義を貫く日本において、天皇が平和の国の象徴として重要な役割を担っているためであり、同様に平和主義者である次期天皇(皇太子徳仁親王と想定)が、安保条約改定などで平和の砦の地盤を緩めようとしている「安倍政権に立ち向かうだけの力があるか」と疑問を投げかけている。

「皇位継承」と「安倍政権による日本の軍事力強化への方向転換」への懸念を示している欧米メディアは多く、7月の与党圧勝が欧米で報じられた際にも、軍事行動の制約緩和を望む安倍首相の今後の政策への関心が非常に高かった。