2017年4月の都市ガス小売り全面自由化を控え、経済産業相の諮問機関・ガスシステム改革小委員会(委員長・山内弘隆一橋大大学院教授)が進めてきた制度設計議論が終わった。ひと足早く2016年4月に完全自由化された電力と同様に、市場開放の枠組みが定まったわけだ。
しかし、国内が送電線網で結ばれている電力と異なり、都市ガスの導管は大都市を中心に国土の一部しか敷設されていない。新規参入は首都圏や京阪神に限定されそうな状況で、大都市と地方の格差が大きな問題にあらためて浮上しそうだ。
二重導管規制の緩和をめぐり、ガス、電力業界が論戦
ガスシステム改革小委員会は、料金規制の撤廃と東京ガス <9531> 、大阪ガス <9532> などガス大手が持つ導管の担当部門を別会社にする法的分離を決めたあと、2015年8月から制度の詳細設計に入った。
経済産業省・資源エネルギー庁によると、決定したのは
◎ 液化天然ガス基地を既存利用業者と同一条件、同一料金で新規参入業者が利用可能とする
◎ 小売り全面自由化後の経過措置料金規制は、都市ガス利用率が50%を下回るなど解除要件を満たしても、特別な事情があれば解除を見送る
◎ 電力会社が強く望んでいたアパートやマンションなど集合住宅への一括供給は認めない
◎既存の導管が敷設されている地域で各社が新たに導管を敷く二重導管の規制を緩和する
◎導管整備では、天然ガスの利用拡大などを考慮し、計7ルートの費用便益分析を進める
−−などだ。ガスシステム改革小委員会は市場の開放を進め、新規参入を促すことを主眼に方針をまとめたが、一括供給は安全確保の点、経過措置料金規制の解除はガス料金の不当な値上げを防ぐことを考慮して判断した。
このうち、最も議論が白熱したのは二重導管規制だった。大幅な規制緩和を求める電力業界とシェアを守りたいガス業界の意見が真っ向から対立、会議は紛糾を重ねた。
二重導管がこれまで規制されてきたのは、導管整備済みの地域で各社が新たに導管を敷くと、設備投資が過剰になってガス料金にはね返る恐れがあるからだ。しかし、電力業界は発電用に購入した熱量未調整のガス販売を計画している。ガス大手が熱量を一定に調整して販売しているガスと成分が異なり、同じ導管で供給できないものだ。
二重導管規制をどこまで規制緩和するかで、電力業界が都市ガスに参入したあとのシェアが左右される。このため、電力、ガス業界とも譲る気配を見せなかったが、経産省は託送供給量の一定割合以下の販売量を上限として二重導管敷設を認める方針を打ち出し、「3年4.5%」の上限値で決着した。