消費者物価2%上昇目標はどこへ行く
日銀は、黒田東彦総裁就任直後の2013年1月、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇2%と定め、これを早期に実現するためにさまざまな政策を講じてきました。日銀の目的は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と法律で決まっていて、かつてインフレだった時代には物価を落ち着かせるのが仕事でした。デフレの今は、逆に物価を上げるのが目標になっています。
しかし、物価上昇率は依然ゼロ近辺に張り付き、なかなか上がってきません。日銀は、2013年4月当初に「2年程度」とした2%上昇時期を、「2016年度前半ごろ」「2016年度後半ごろ」「2017年度前半ごろ」「2017年度中」と延ばし続け、とうとう黒田総裁自身の任期(2018年4月)ぎりぎりまで延ばしてしまいました。
今回、達成時期は延ばしませんでしたが、黒田総裁は「中心的な見通しとしては2017年度中になるとみられるが、海外経済の不透明感などから不確実性が大きい」といくつかの言葉を挟み込み、微妙にずらしました。そして、9月に開かれる次回の金融政策決定会合で、2013年1月以降の金融政策を検証するとしました。日本経済新聞は「9月には、2年の目標を撤回し、あいまいな表現にする」という見通しを伝えています。
日銀はもはや手詰まりなのか
黒田総裁は会見で「マイナス金利や量の拡大(量的金融緩和)が限界に来ているとは考えていない。2016年1月の導入決定以来マイナス金利は市場に受け入れられている、実体経済にもプラスの影響を及ぼしつつある。欧州の状況をみてもまだ深掘りする余地はある」と言いましたが、現在のマイナス0.1%のマイナス幅を、この先は広げないだろうとの観測が強まっています。
一種の手詰まり感が日銀周辺に漂っています。この日銀の金融政策の手詰まり感は、随伴してきた安倍内閣の経済政策・アベノミクスの手詰まりを意味しています。
いずれ、マイナス金利政策はどこかで金利上げ局面がくるでしょう。その時に、急な金利上昇が起きると、国家財政に悪影響を及ぼすハイパーインフレ(超インフレ)現象が起きてしまう恐れがあります。その時、日本経済はこれを乗り越えられるのか、難しい局面が近づいています。 (提供: 不動産投資ジャーナル )
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