大学・大学院卒の年収300万円未満層の推計~30歳以上の非正規雇用男性で4割前後

前述の通り、非正規雇用者の男性で大学・大学院卒の場合、30代以上で平均年収が300万円を上回るため、家族形成の壁に比較的ぶつかりにくいようだ。しかし、これは平均値であり、年収300万円未満層も少なくないことが予想される。よって本節では、大学・大学院卒に注目して、年収300万円未満層の具体的なボリュームを推計する。

算出方法は冒頭で挙げたレポートと同様であり、性・年齢階級別に所定内給与額階級別の雇用者数分布を作成し、そこで「所定内給与額階級20.0~21.9万円以下」を年収300万円以下と仮定する(*1)。

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図表7より、年収300万円未満の大学・大学院卒の男性は25~29歳では43万人で、同年代男性の正規雇用者と非正規雇用者を合わせた雇用者合計の26.5%を占める。さらに、雇用形態別に見ると、大学・大学院卒の25~29歳の男性では、正規雇用者で年収300万円未満は31万人(同年代の正規雇用男性の21.7%)、非正規雇用者では12万人(同様に61.5%)となる。

なお、図表6で示した通り、大学・大学院卒の非正規雇用者の男性では、30代以上で平均年収が300万円を超える。しかし、図表7を見ると、当該層で年収300万円未満の割合は4割前後であり、年収の平均値こそ300万円を超えるが、4割という決して少なくない層が年収300万円に満たずに、家族形成の壁にぶつかりやすい様子がうかがえる。

一方、大学・大学院卒の正規雇用者の男性で年収300万円未満は、20~29歳で約2割、30~34歳で1割弱、35~39歳以上で5%以下であり、年収に起因する家族形成の壁にはぶつかりにくいようだ。

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(*1)ただし、この仮定は、既出レポートでも記載の通り、男性正規雇用者の所定内給与額と年間賞与その他特別給与額から推計した年収を参考にしているため、非正規雇用男性や女性における年収300万円未満層の人口は実際より少ない可能性がある。なぜならば、非正規雇用男性や女性では、正規雇用男性と所定内給与額階級が同等でも、年間賞与その他特別給与額は少ない可能性があり、その場合、実際の年収は男性正規雇用者で想定したものより少なくなってしまうためである。
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