所有することはリスク、そう考える個人が増え、若者の自動車離れなどが話題になっている。だが、所有がリスクになるのは、個人に限った話ではない。機材ありきである物流業界にも、シェアリング・エコノミーの波が来ている。

航空業界にもシェアリング・エコノミーの波

最近関連ニュースが増えているのが、航空業界である。背景にあるのは、LCC(格安航空会社)の興隆だ。厳しいコスト競争に晒されているLCCにとって、高額の航空機を購入するのは難しい。購入ではなくリースとすることで、金融機関からの融資を有利にすることができる。健全経営を維持することは、いわば当然の帰結といえる。

現在2 万 5000機以上の航空機が、世界の空を飛んでいるが、そのうちリース機の比率は実に45%にも及んでいるという。日本においても、2016年8月に、伊藤忠商事が英航空大手のブリティッシュ・エアウェイズ(BA)から、十数機の中型旅客機をリース契約している。また2016年6月には、三菱航空機製の初の国産ジェット旅客機(リージョナルジェット)20機の受注が決まったが、その相手先もロックトンというスウェーデンの大手航空機リース会社だ。LCCによる機数拡大競争は、今後も一層活発化することが予想されており、それにともなって航空機のシェアリング・エコノミーが、増加することは間違いない。

海運業界は負の遺産消化できず、シェアリング・エコノミーはまだ先か

一方で、海運業界においてはシェアリング・エコノミーの普及はまだ進んでいない。歩みを停めている大きな原因は3つある。まず世界的な景気減速による船舶運賃低下、そして中国経済の減速による輸送量の低下、それにともなう能力過剰である。世界最大級の船舶解体場といわれる、インド・アランの浜辺には、日々多くの船が運び込まれ、船体の切断作業が行われている。その惨状はまさに、船の墓場と呼ばれるほど痛ましい。

とくに日本では、シェアリング・エコノミーはなかなか進んでいない。理由としては、船舶へのファンドやファイナンスの条件が税制的に厳しく、またピッグプレーヤー不在、海運ビジネスに精通した金融人材不足、さらに海運業界の古い慣例などの壁があるからだ。結果として、世界的にみても相当遅れていると指摘されているのである。しかし、船舶は航空機以上の高額な設備であり、シェアリング・エコノミーが導入されれば、より柔軟なビジネスに道を開く可能性がある。

ただ減価償却さえままならない日本の海運業にとって、シェアリング・エコノミーによって次代への一歩を踏み出すのは、まだ時期尚早という意識が大勢のようだ。