シェアリング・エコノミーを牽引するのは運輸業界

物流業界で最もシェアリング・エコノミーが進んでいるのは、やはり運輸業界だろう。個人向けサービとして、カーシェアリングや自分の車をタクシーとしてシェアするなど、世界的にも急速に普及している。

法人向けはまだこれからといった段階だが、日本でもネット印刷サービスのラクスルが、トラック運送業者の空き時間を使った、荷物配達サービス「ハコベル」をスタートしている。運送業者が保有するトラックの空き時間を利用して、配送を受託できるサービスで、利用者がパソコンやスマートフォンを使って希望条件を入力して依頼するシステムだ。余った資産と時間を需要と結びつけ、中小企業を支援するサービスとして話題を集めている。

ほかにも、建築・農業・ヘルスケア関連等の機械、設備、サービスをシェアする「Floow2」、建設機器に絞ったマーケットプレイス「Equipment Share」、スマホやPCで簡単に利用できるオンラインコインパーキングサービスの「akippa」などが登場している。

続々と企業向けのサービスが登場するのには、運送機器・サービスは購入単価が高いという背景があり、今後も様々なジャンルで増加すると予想される。個人で主流となった運送のシェアリング・エコノミーは、今まさにビジネス分野に拡大発展していく段階といえるだろう。

個人向けサービスから見える、法人向けの死角

始まったばかりの法人向けシェアリング・エコノミーだが、利便性やコスト削減の観点から見て経営面でのメリットが多く、日本でも今後爆発的に広がると期待されている。だが、死角はないのだろうか。

予想は難しいが、すでに個人向けサービスで指摘され始めているデメリットが、法人向けでも同様にデメリットになる可能性がある。たとえば、すでにお馴染みとなりつつある民泊あっせん企業Airbnbだが、米国ではニューヨークの地価を高騰させた元凶として、非難を浴びている。理由は、Airbnb用に貸し出すためのビルが乱立したことで一般不動産の供給を圧縮し、価格を上げてしまったからだ。当然、客を奪われた既存のホテル業界からの非難の声も大きい。また配車サービスのUberは、これまでのタクシーサービスを圧迫し、運転手の雇用を奪うとして、タクシー業界から強い非難を集めている。

新しいサービスであるがゆえに、先走った業者が法整備の整わないうちに、収益性のみを追求することは考えられる。既存のサービスを圧迫し、競合する業界から雇用を奪うだけでなく、利用者無視となる可能性も否定できない。

利用者優先を考えるのであるなら、法を整備し、雇用のスムーズな移転を実現し、ソフトランディングを図ることが、これからの政治に求められるだろう。

日本政府も2016年をシェアリング・エコノミー元年と位置づけ、さまざまな環境整備を進めている。それに先立ち、2015年12月には民間の関連企業が集まり、業界団体「シェアリングエコノミー協会」を設立し、さまざまなルール作りにも取り組んでいる。

インターネットやSNSの広がりによって、可能となったシェアリング・エコノミー。これから紆余曲折はあるだろうが、利用者の支持が集まりつつある現在、ビジネス分野においもその進化・拡大はさらに加速していくと予想される。だが、本当に生活に役立つものなのか、最終的に利用者が不利を被らないか、見極める必要があるだろう。(ZUU online編集部)

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)