ファナック・キヤノンはROE重視に舵取り?
1位のファナックと2位のキャノンは前回と同じ顔ぶれだが、注目したいのは2社ともキャッシュを大幅に減らしているという点だ。ファナックが1846億円、キャノンも2104億円のキャッシュ減少である。
キャッシュを多く保有しているということ自体は、必ずしもすべての利害関係者に歓迎されるわけではない。特に上場企業には自己資本利益率である、ROEを高める経営戦略が求められており、とりわけ「当面の投資先がないキャッシュは株主に還元すべきだ」との意見も強くなってきている。ROEはもともと、外国人投資家が注目していた指標であり、2014年のJPX日経インデックス400指数の登場でも注目された。2社とも同指数に選出されている。
実際、ファナックは2015年3月期に連結の配当性向を、30%から2倍の60%に引き上げ、さらに2016年2月には6年半ぶりに自社株買いを実施するなど、ROEを重視する経営に大きく舵を切っている。2位のキヤノンも、2015年にネットワークカメラ世界最大手、アクシスコミュニケーションズを約3300億円で買収、2016年には激しい競争の末に東芝メディカルシステムズを6655億円で買収している。
三菱自動車は燃費データ不正問題が尾を引く
5位となった三菱自動車においては、2016年4月に発覚した燃費データ不正問題が、業績を直撃している。
全国軽自動車協会連合会が発表した、軽自動車の5月販売台数では、三菱自動車の売上は前年同月比75.0%減と激減している。2017年3月期の業績見通しは、当期利益が1450億円の損失見込みとなっており、エコカー減税に関する追加納税も考えると、今後もネットキャッシュの減少が避けられない見通しだ。
他社の動向もあるが、2017年のランキングでは順位を下げる可能性が否定出来ない。
任天堂へのポケモンGO効果は?
4位で5704億円の任天堂に関しては、世界中で話題となっているポケモンGOの影響が気になることころだ。ただ、このソフトは任天堂が配信しているアプリというわけではなく、関連会社である株式会社ポケモンの利益を一部取り込むことによって、はじめて業績に影響が及ぶ。
株価が急騰するなどの過熱ぶりには、任天堂自身が「業績への影響は限定的」と公式発表するほどの騒ぎになっている。だが、キャッシュフローの面でマイナス要素があるわけではなく、同社にとっての大きなプラス要因であることに間違いはないだろう。
今後は2016年9月のウェアラブル端末「Pokemon Go Plus」発売の影響も気になるところだが、一時4500万人いたとされるユーザーが、3000万人ほどに落ち着いているとのデータもあり、大幅なジャンプアップは期待しにくい。
為替や景気動向にも大きく左右される企業のネットキャッシュ。来年もファナックが1位記録を更新するのか、はたはた他社が猛追するのか今後も要注目である。(ZUU online編集部)