エコノミスト,アベノミクス,判断
(写真=Thinkstock/Getty Images)

マーケットのエコノミストとしての重要な仕事は三つあり、一つ目は、データの相関関係の発見という「観察」であることを解説した。

問題なのは、相関関係を「観察」しても、因果関係の向きは分からず、その因果関係の向きによって、同じ相関関係を見て、間逆の結論を導くこともできることだ。そうなると、エコノミストの重要な仕事の二つ目は「判断」で、何を「判断」するかというと因果関係の向きということになる。

「観察」から見えた相関・逆相関へのアプローチを「判断」する

一例として、企業貯蓄率と財政収支の相関関係(この場合は逆相関)が「観察」できることを考えてきた。

日本経済の大きな問題は、マイナスであるべき企業貯蓄率が恒常的なプラスの異常な状態が継続し、企業のデレバレッジや弱いリスクテイク力、そしてリストラが、総需要を破壊する力となり、内需低迷とデフレの長期化の原因になっていることだ。企業活動が弱くなり、企業貯蓄率が上昇し、過剰貯蓄が総需要を破壊していき景気が低迷すれば、税収が減少し、景気対策も必要となり、財政赤字は増加する。

逆に、企業活動が強くなり、企業貯蓄率が低下し、総需要を破壊する力が弱くなれば循環的に景気は回復し、税収が増加し、財政赤字は縮小する。この場合、因果関係は企業貯蓄率から財政収支に向かっている。

金融政策・財政政策・成長戦略の三本の矢で企業を刺激して、企業活動の回復の力で、デフレを完全脱却するという、アベノミクスの政策理論の根幹である。企業活動が回復し、企業貯蓄率が低下するとともに、税収が増加するなどして財政収支は改善していくことになり、「経済再生なくして財政健全化なし」というアプローチとなる。

相関関係の因果関係が企業貯蓄率から財政収支の方向に強ければ、アベノミクスをサポートするが、逆方向に向いていれば財政緊縮による財政収支の改善が企業活動を刺激する、という論でアベノミクスを否定することになる。

企業が投資に消極的で、負債を返済し貯蓄をしてしまう原因は、財政赤字が大きく、政府の負債残高が膨張しているため、将来の金利の高騰を不安視しているからだと考える。家計も、財政収支が悪いことにより社会保障システムが持続的ではないと感じ、消費を抑制してしまっていると考える。