不動産の物理的リスク
それぞれの不動産が抱えている物理的な欠陥が、大きなリスクとなる場合があります。取得する土地が以前に工場用地だったような場合、重金属類等による土壌汚染を疑う必要があります。平成15年に土壌汚染対策法が施行されてから、各自治体が一定の要件で汚染調査を義務付けるようになり、土壌汚染は重要なリスク要因となりました。義務調査ではなくても、売買契約の前に売主が汚染調査を行うケースが一般的になっています。
築年数の古い建物を取得する時は、アスベストに注意しましょう。以前に断熱材として使用されていたアスベストは深刻な健康被害リスクをもたらすということで、状況に応じて除去を義務付ける等の厳しい措置がとられています。多額の除去費用も発生しますし、建物の資産価値も著しく下がります。
また東日本大震災以降、建物の耐震性については一般のユーザーも敏感になっています。建物の建築年が1981年(昭和56年)以前であるときは地震リスクが大きいといえます。なぜなら建築基準法改正により耐震基準が大幅に改められたため、それ以前のいわゆる「旧耐震基準」で建築された建物は耐震性が低いと見なされるからです。耐震改修工事や建て替え等で、多額の出費となるリスクがありますね。
不動産の法的リスク
土地の上に建物を建てるときには、主に建築基準法の規定に従って建築しなければなりません。ですが現実の不動産のなかには、この規定を満たしていないものも多く存在します。違反に気付かないで不動産を取得してしまうと、是正措置を命じられて思わぬ費用負担が発生したり、売却時に大きく価格が下がってしまうといった大きなリスクがあります。
私が経験した違反建築物の例としては、以下のようなものがありました。
○ビルの屋上にプレハブ倉庫が建っているが、確認申請時の図面に記載されていない。
○事務所として申請された部屋が、住居として賃貸されている。
○図面では2階建てだったが、屋根裏部屋があることで実質は3階建て。
このようなリスクは素人目には、なかなか見つけられないものです。不動産を取得する前に、建築士に調査を依頼するなどしてリスク・ヘッジをしておきたいものですね。