日本の長寿マンガ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が9月17日に最終話を迎えた。『週間少年ジャンプ』に連載を開始したのが1976年。40年の連載は、少年誌の長期連載のギネス世界記録に認定されている。単行本は、同日発売される200巻ちょうどで終了となる。その内容は日本の歴史そのものだ。こち亀終了を記念して日本経済を振り返ってみたい。
日本の現代史「こち亀」は亀有が誇るコンテンツ
説明するまでもないだろうが、こち亀は、典型的な昭和のお巡りさんである主人公・両津勘吉や周辺の愛すべき主人公達がドタバタ劇を引き起こすギャグ漫画だ。緻密な取材と、細かい背景などが特徴なため、作中には日本の文化が満ちあふれている。
その当時のヒット商品、人気のテレビ番組や芸能人などのテーマが取り上げられており、新型自動車、インターネット、携帯電話などの世界を変えたものはだいたい扱われており、まさに日本の現代史そのものといえるだろう。
協力コンテンツとして一般社会にも影響を与えた。東京都葛飾区のJR亀有駅前周辺には両さんの銅像全部で15体ほど建てられている。亀有銀座商店街では「両さんどら焼」が売られている。「亀有公園前派出所」は存在しないが、亀有署亀有駅北口交番はファンが立ち寄る名所だ。交番でファンが「両さんはいますか」と声をかけると、お巡りさんは「パトロール中です」。そんな風に気さくに答えてくれることでも知られている。
浅草神社には「生まれも育ちも浅草の両さん」にちなんで、単行本総発行部数1億3000万冊突破記念の石碑が建立されている。アリオ亀有内には「こち亀ゲームぱ?く」がある。まさに、浅草、亀有が誇る日本のコンテンツだ。連載が終わったあとも世界から愛されるキャラクターとして存在し続けるに違いない。
将来は昭和の文化研究の教科書に?
1976年の第1巻を見返してみると、電話は黒電話でダイヤル式、当然携帯電話はない。亀有公園前派出所の掲示板には「アグネス・ラムいよいよ来日 交番にてサイン会」と書いてある。「花の警察官大募集中!!時給450~500円」ともある。両さんは交番で競馬をやっているのだが「ハイ・シチズン」という、当時大活躍した「ハイセイコー」をもじった馬の特券を買っている。アグネス・ラムもハイセイコーも70年代に大ヒットした。
新人の中川警官の憧れはダーティハリーのイーストウッドだ。ダーティハリーは71年に公開している。また交番の掲示板には「3億円事件の犯人のお尋ね書」も貼られている。3億円事件は75年だ。では、連載開始当時1976年の社会・経済はどうだったのだろうか。