「こんなブラックな働き方から離れたい」「あの上司の命令口調や無茶ぶりがムカつく」「どうして面倒なクライアントしか来ないのだろう」

こういったストレスは、仕事をする社会人なら一度は誰でも抱くものです。そして「こんな仕事、辞めてやる!」と意気込むことも。

けれど、大抵の場合は、辞めずにそのまま不満を募らせながらその仕事を続けていくことになります。その理由を聞くと、多くの場合、「生活が成り立たなくなる」「今、不況で転職も難しいから」「家族を養わないといけないし」といった外部的な分かりやすい原因を列挙します。

しかし、本当の理由は実は無意識のもっと深いところにあるのです。そして、その無意識にある何かを手放さない限り、人は環境が変わっても同じ現象を引き寄せ続けることになります。

ドン・キホーテ、会計事務所…過酷労働が続いた私のケース

ドン・キホーテ勤務時代、そして会計事務所勤務時代、私は過酷な環境で仕事をしていました。

当時のドン・キホーテはインターネットで叩かれるほど激務の環境で、私は朝8時半から夜の10時過ぎ、時には午前様になるほど働いていました。販売の成績が上がらなかったため経理に配属替えになったものの、上司に怒られ、「ダメな自分」を痛感する毎日は変わりませんでした。

次の会計事務所は高齢の女性税理士の所長1人に職員2人の零細事務所でした。いつもイライラしている女性所長は職員にとっては怖い存在でした。言ってもいないことを「私、言ったはずよ!あなたが聞いていないんでしょ」となじられ、どんなに頑張って所長の要求に応えても、事務所のピリピリした雰囲気が和らぐことは一度もありませんでした。

転職前も転職後も、常に私の身体は冷えや生理痛、関節痛などの痛みを訴えていました。同時に、私はよく夫や友人たちに不満やグチをもらし、「こんなところ、今すぐでも辞めたい」とぼやいていました。

しかし、「すぐに辞めたら『社会人失格』のレッテルを貼られてしまう」「中途半端に辞めたら税理士の登録要件を満たせなくなってしまう」といった分かりやすい理由で、「もう少し耐えよう」と自分をなだめてとどまっていました。

独立開業をしても、なぜかしんどい仕事ばかり

「仕事は大変で当たり前」という思い込みを持ったまま、その後、数年経って、私は税理士として登録し、独立開業をしました。誰かに雇ってもらうのではなく、一人のフリーランスとしてスタートしたのですから、本来ならば、自ら働く環境や条件を選べるはずです。自分がラクに付き合える相手、自分が楽しくできる仕事、無理のないスケジュールで働いてもよかったはずでした。

しかし、実際には、膨大な作業量を低価格で行わなければならない現実、そして要求が多く、こちらの意見に耳を貸さないクライアントが最初にやってきました。再び私は身体を酷使して徹夜をしたり、1カ月間まるごとプライベートを犠牲にして働いたりするようになりました。

「環境は変わったのに、なぜ、しんどい仕事ばかりが続くのだろう」

そう疑問を持ちながらも、信用を失う怖さと収入がなくなる恐怖から、私は過酷労働を続けていました。そしてある日、心理学を学び、心理セッションを受けてから、私は自分の抱えてきた問題の根本に気づいたのです。それは、その過酷な環境に私の無意識が「メリット」を感じていたからなのでした。

脳の深い部分が、自分にとっての「快」を選んでいる

脳は基本的に「快」「不快」で判断し、常に「快」を選び続けます。「ならば本来、ストレスの多い職場環境を避け、ラクな仕事の仕方を選ぶはずではないのか?」と疑問にもつところです。しかし、無意識を司る脳の深い部分は、理屈や常識とは全く違う「快」「不快」の判断基準に従っています。

脳の深い部分には「古い脳」と言われる大脳辺縁系があり、さらにその内側には脳幹があります。大脳辺縁系は感情を司り、「快」「不快」を判断します。そして脳幹は本能を司り、無意識で情報を判断し、行動を左右します。

脳幹や大脳辺縁系が形成されるのは6歳以下の幼少期です。その時期の環境、親子関係、感情の動き方で、その人自身の「快」「不快」が無意識での選択のルールとなっていきます。

また、「快」「不快」の基準は、「生存できるかどうか」です。生存の条件は、食事や睡眠といった「お世話」だけでなく「母親など特定の人との愛着関係」も含まれます。

つまり、衣食住だけでなく、見てくれる誰かがいなければ生き残っていけないことを、人は赤ちゃんの頃から本能的に分かっているのです。

幼少期の体験から、ストレスが必要な存在になっていた

私の場合、幼少期、さまざまな過酷な環境を体験していました。

シングルマザーの母が夜、仕事に出る前に預けられた先では、真夜中におねしょをすると朝まで風呂場に立たされました。母のところに時々男性が訪れていたのですが、真っ暗闇の中で一人、布団に寝かされ、母に「助けて」「怖い」を言うことはタブーでした。真っ暗闇は幼い子どもにとっては過酷な環境です。でも、これを耐え抜けば、再び母は私とかかわってくれました。

さらに、母への印象は、物心ついたときには既に「高圧的で、怖い存在」でした。いつ怒鳴るか分からない、いつキレるか分からない。心をオープンにして、甘えたい時に素直に甘えていた記憶はありません。

母に恐怖を感じながら母と生活することは幼い私にはとてもストレスフルだったのですが、それでも見捨てられて死んでしまうよりはマシでした。つまり、母との関係は恐怖やストレスでつながる以外の選択はなかったのです。

「見捨てられずに済む」というメリットを得るために、「過酷な環境を耐えること」「恐怖やストレスを感じること」は私にとって欠かせなかったのです。

過酷な働き方を選んでいたのは自分だった

様々な選択肢のある大人の視点からすれば、これは馬鹿げた思いこみにすぎません。しかし、子どもは大人よりずっと狭い世界で生きています。かつ、大人と同等の力を備えていません。思いこみを信じ、決めたルールに従うことが、子どもにとっては唯一の生存戦略なのです。

これに気づいたとき、私は自分で無意識に過酷な働き方を選んでいたことを自覚しました。そして葛藤し、自分自身の内側と向き合い、自らの心を癒し、思い込みを修正しました。そうすることで、脳の「快」「不快」の選択をあらためてやり直したのです。

今の働き方を改めるには、「問題を抱えることによるメリット」を探ること

今、この記事をお読みの方の中にも、かつての私と同じような悩みを抱えている人もいるかと思います。「やめたいのにやめられない」「逃げたいのに逃げられない」。

そういうときは、無意識があなたの行動を止めています。そしてその無意識は幼い時からずっと持っていたルールで環境を選択しています。無意識のパワーはあなたが思う以上にパワフルです。なぜなら、生存本能と強く結びついているからです。

もし、本当に働き方や環境を変えたいと思うなら、まずは「今抱えている問題」と「この問題を抱えていることによるメリット」を紙に書きだしてみましょう。

そのメリットは、あなた自身の「安心」「安全」につながるはずです。それを手放してでも変わりたいと思えるかどうか。変われるかどうかは、あなた自身があなたの内側と向き合う覚悟と決意ができるかどうかにかかっています。

鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)
税理士鈴木まゆ子事務所代表。外国人のビザ業務を専業とする行政書士の夫と共に外国人の起業支援に従事する。国際相続などについての記事執筆にも取り組む。税金や金銭に絡む心理についても独自に研究中。 税理士がつぶやくおカネのカラクリ

(提供: DAILY ANDS

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