企業価値評価の高いがスタートアップによるダウン・ラウンド(相場よりも安価格で株式を発行して増資を行う手法)が珍しくなくなった近年、9月30日に上場したクラウド企業、Nutanix(ニュータニックス)の株価が130%も急騰し話題を呼んでいる。
しかし「企業価値評価の高いユニコーンは、後々(特に上場後)株価が低迷しやすい」という説を唱える専門家の間では、群集心理に起因する一過性の現象という見方もでているようだ。
パーンデーCEO「群集心理に左右されず息の長い企業に成長したい」
仮想化技術を用いて空間を創りあげる「ハイパーコンバージド・システム」で、一躍テクノロジー市場の寵児となったNutanixは、昨年末に米証券取引委員会(SEC)にIPOの申請を行い、9月末からナスダックでティッカーシンボル「NTNX」のもと取引を開始した。
13ドル(約1321円)から15ドル(約1523円)という当初の予測を大きく上回り、30日の終値は26.50ドル(約2692円)。131.25%増という快挙を成し遂げ、昨年上場した米クラウド企業、 Twilioの初日91%増の記録を更新した。
NutanixのパーンデーCEOは「低過ぎでも高過ぎでもない、ちょうどよい価格でスタートをきりたい」と、大好調の滑りだしにも有頂天にならない地に足のついたコメントを発表ユニコーンの上場に飛びつく投資家が多い中、群集心理に左右されず息の長い成長をはぐくんでいく姿勢を見せている。
パーンデーCEOの冷静な判断は、数多くのユニコーンがダウン・ラウンドで上場したことで、後々自らの首を絞めている現状に起因する。
ベンチャーキャピタルデータ会社、ピッチブックのデータによると、2012年以降、ダウン・ラウンドで上場したテクノロジー企業32社のうち、現在53%がIPO(株式公開)価格よりも低い価格で取引されている。
決済スタートアップ、Square、ストレージサービス会社、Box、ビッグデータ会社、ホートンワークスなどが、民間市場評価より5ドルから8ドル(約508円から813円)低く取引されているユニコーンの代表例だ。
「高評価額がついたユニコーンほど後々苦労する」という英国際法律事務所、ホーガン・ロヴェルズのパートナーを務めるネイト・ガロン氏の言葉を、しっかりとを裏付けている。
Nutanix(ニュータニックス)への熱狂ぶりがやがて冷め、これらのダウン・ラウンドユニコーンと同じ運命をたどるのか、あるいはパーンデーCEOの目指す息の長い企業に成長していくのか。今後の行方に注目したい。( FinTech online編集部 )
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