ING銀行のラルフ・ハマーズCEOは、今度5年間にわたりオランダ、ベルギーを中心に7000人のリストラを実施し、9億ユーロ(約1029億4020万円)の経費削減を意図している意向を明らかにした。一割強の外部従業員に加え、総従業員数の12%弱が職を失うことになる。

その一方で8億ユーロ(約915億240万円)を投じた大がかりなデジタル改革が予定されているなど、近年大手銀行で相次ぐ「デジタル化と人員削減の方程式」が、ここでも利益創出という回答をだすことになりそうだ。

蘭、ベルギーを削り、仏、伊など小規模市場で事業モデルを構成

「Think Forward(未来を考える)」と名付けられたINGの組織再編計画では、主にオランダとベルギーのバンキングプラットフォームの統合を、最終目標にかかげている。

INGはデジタル改革を通し、スペイン、イタリア、フランス、オーストラリア、チェコといった小規模市場で事業を拡大していく予定だが、本国オランダでは少なくとも2300人、ベルギーでは3500人が失業する。

ハマーズCEOはこの再編計画がすでに著しい効果をあげていることや、300万人の新顧客獲得を期待していることなどをアピール。消費者によるデジタルバンキングの需要が急激な高まりを見せている近年、それに対応するのが得策であると確信している。

新たなテクノロジーの採用にオープンな環境が整っている経済大国は勿論、経済規模の小さな国でも共有運営プラットフォームの構築が、事業分野で求められている。時代の流れを考慮すれば、INGを含む大手銀行のデジタル化は大正解だといえるだろう。

しかし失職する従業員を始め労働組合の目には、犠牲をともなう組織再編は非情な決断としか映らない。オランダの労働組合のひとつ、CNVは、2008年世界金融危機の際にINGがベイルアウトによって救出された事実を指摘し、「今回のような大量の失業者を生みだすために、政府は支援の手を差し伸べたわけではない」と厳しく非難。ベルギー側でもストライキが予定されているという。

一方ハマーズCEOは「デジタル改革には犠牲がともなうが、改革は余力のあるうちに実施される必要がある」と、数々の非難にも屈しない構えだ。

デジタル化と失業のジレンマは金融産業に限ったことではない。需要と供給のバランスをとるのがいかに困難な課題であるかという現状を、いやというほど痛感させられる。( FinTech online編集部

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