保険が保険にならない?

なんだ、ほかの人が助けてくれるなら保険の方がいいじゃないかと思う方がいらっしゃるかもしれません。でも、世の中そんなに甘くないのです。 結論から言うと、筆者は前提条件付きで貯蓄を支持します。その理由は「換金性(かんきんせい)」です。 銀行や郵便局に預けた預貯金は、万が一そのお金が必要になったとき、それほど大きなペナルティなしに現金が手に入ります。定期預金の解約には窓口に出向く必要があるとかちょっと面倒かもしれませんが、いずれにせよ金融機関で引き出したい旨を本人が申し出れば、残高と同じ額を手に入れられます。

一方保険は、保険会社に電話したり、保険の営業マンや代理店に連絡しただけでは保険金や解約返戻金(解約した時に手元に入るお金のこと。解約返戻金がない保険もある)をいただくことができません。 もっともお金が必要なのは、病気やケガをして病院に治療費を支払う時かもしれません。残念ながら病院はまだまだ現金主義で、クレジットカード払いができるところが少ないが故、場合によっては高額な現金を手元に用意する必要があるのですが、このときたいていの場合、保険金はあてになりません。なぜでしょう?

保険金は、保険金を支払うべき条件を満たしたとみなされて初めて受け取れるものだからです。病気やケガの治療費のケースになぞらえると、簡単に言えば病院での領収書をもらい(保険会社指定の診断書が必要な場合も少なくない)、保険会社から保険金請求用紙を取り寄せて、記入して領収書等と提出して、保険会社の審査を経て初めて支払われるかどうかが決まるのです。つまり、一番現金が必要な時に、保険は役に立たないかもしれないのです。 最近は、たとえばがん保険のように、がんと診断された時点で一時金が給付されるようなケースもあるので、必ずしもこの通りではありませんが、保険はロスを埋めるものなので、ロスの額が確定しないと保険会社は保障(補償)をしてくれないのです。

貯蓄にはペイオフ制度がある

病気やケガなどでまとまったお金が必要になった場合は、現金の方が汎用性が高いので貯蓄の方が使い勝手がいいだろうというのが筆者の持論です が、先ほど「前提条件付きで」貯蓄を支持しました。つまり、保険が有利になる方ももちろんいるのです。 ここで思い出してほしいのが銀行等のペイオフ制度です。万が一銀行等が破たんした場合には1,000万円までの元本部分を預金保険機構が保証してくれる制度ですが、1銀行等につき1,000万円ですので、1つの銀行に大金を預けておきたくないと思う方もいらっしゃるでしょう。また、銀行等を分散するのにも限界がある方もいらっしゃるかもしれません。 そのような方には、保険の使い勝手の方がいいかもしれません。いざという時に必要なお金はすでに銀行等にある方ですので、保険金がすぐに支払われなくてもあまり困らないですし、保険料控除という税制上のメリットを受けられる場合もあります。

両方と上手に付き合いたい

というわけで、貯蓄と保険にはどちらにもそれなりの長所と短所があります。 それぞれの特徴をよく理解したうえで、上手に使い分けたいものです。 また、貯蓄の残高がペイオフ限度を超えているような場合でも、銀行等では投資信託を扱っていることが多いと思います。投資信託は値動きこそありますが、その資産は分別保管と言って、銀行等の預貯金とは別の資産管理をされていますので、保険にすでにメリットを感じられないようであれば、MMF等元本確保に近いような商品を購入するのも一案でしょう。

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