隣国シンガポールがアジアFinTechのリード国として急成長を遂げた陰で、インドネシアへの注目度もじわじわと高まりつつある。
インドネシア最大の強み(拡大が大いに期待できる市場と労働力)を最大限に活かし、決済から投資、融資、クラウドファンディングまで、多技にわたる金融分野で、様々なスタートアップが生まれている。
現金決済が85% 奮闘する45社のスタートアップ
インドネシアにおける銀行口座所有者数は総人口6000万人の25%。新興国特有の「成長の可能性」が、市場のいたるところに転がっている。高齢化している多くの国とは対照的に、労働力は働きざかりの25歳から29歳を中心に(14.20%)、20代、30代、40代が全体の60%以上と、非常にバランスがとれている。
スタートアップ数はわずか45社と小規模ながら、他国に負けない幅広いFinTech分野をカバーしている。最も盛んなのは決済分野で、市場の32%を独占。次いで金融商品・サービスの比較(17%)、融資(15%)、POS(11%)の勢いが目立つ。
決済分野では800社を超える企業にオンライン、モバイル決済サービスを提供しているDokuを筆頭に、Veritrans、Kartuku、PadiPayといったスタートアップがリード。比較分野ではHaloMoney、Cekajaのほか、2013年にシンガポールの自動車保険比較サービス会社、FatFishに買収されたRajaPremiなどが代表格だ。
インドネシアのP2P融資を加速させたSME(中小企業)向けP2Pスタートアップ、Modalkuや、短期マクロクレジットを提供しているTaralite、UangTeman.comにも注目だ。
公益事業にターゲットを絞ったクラウドファンディングではKitabisa。クリエイティブ系ならばWujudkanといったところだろうか。ビットコイン分野も順調な伸びを見せており、現時点ではBitcoin.co.idがインドネシア最大の取引プラットフォームい成長している。
金融サービス庁(OJK)がFinTech促進に向け規制改正などに乗りだしているが、スタートアップが予想以上に苦戦しているのは事実だ。「他国ではすっかり定着したモバイル決済に、インドネシアの消費者が興味を示していない」ことが、その理由のひとつとして挙げられているが、「現金決済がいまも85%を占めている」という揺るがしがたい現金主義国家の存在が背後にある。
インドネシアFinTechを盛り上げるうえで、こうした致命的な障害物をひとつひとつ排除していくことが必須となる。困難を極める作業のように思えるが、つい最近までは他国でも同様の状況であったことを考慮すれば、けっして不可能な変化ではないはずだ。( FinTech online編集部 )
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