マスターカードと英スタートアップ、スターリング銀行が提携し、デビットカードとモバイル銀行口座によるライブ(即時)カード取引を成功させた。

マスターカードのコンタクトレス・デビットカードをスターリングのモバイル口座とリンクさせ決済。すべての入出金を即座にアプリで表示するという試みだ。アプリでは入出金の動きや分析ができる「お金の管理ツール」も利用可能とサービス満点で、従来型の銀行とモバイル銀行間の壁を取り払おうとしている。

「従来型の銀行の補足」というモバイル銀行のジレンマを払拭

2014年にモバイル専用銀行として生まれたスターリング。同じく英発モバイル銀行、Monzo(今年8月にMondoから改名)を立ちあげた、トム・ブローフィールド氏がCTOとして事業にたずさわっていたモバイル銀行の元祖である。

「従来の銀行口座をそっくりモバイル化する」というコンセプトのもと、Monzoやアトム銀行といったモバイル専用銀行とは一味違った独自の特質を打ちだそうとしている。

モバイル専用銀行はスマホ社会となった現代の需要に適合している反面、物理的な入出金はプリペイカードを通すなど、予期せぬところで意外と手間がかかるという難点がある。そのため注目は浴びていても、従来型の銀行の補足あるいは仲介地点的な位置づけから脱けきれないというジレンマが横たわっている。

しかしスターリング銀行がマスターカードのような国際大手のデビットカードを発行するとなれば、決済市場の流れががらりと変わることが期待できる。モバイルバンキングの手軽さや低コストと、従来型の銀行の利便性が融合されればまさに鬼に金棒だ。

スターリングのモバイル・デビットカードには管理ツールもついていて、お金の動きを定期的に見直すこともできる。「顧客が上手にお金を管理するうえで、情報管理がどれほど重要か」という点を重視。利便性を追求するだけではなく、顧客が健全な経済状況を築くための配慮もなされている点が嬉しい。

マスターカードUK・アイルランド地区のマーク・バーネット社長は生活スタイルが著しく複雑化している現代において、「スターリングとの提携が消費者により快適な決済環境をもたらす」と、次世代バンキングの進化を大歓迎している。

スターリングとマスターカードによるモバイル・デビットカードは、2017年より本格的に市場に出回る予定だ。( FinTech online編集部

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