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(写真=PIXTA)

全企業の約4割が採用しているといわれる「住宅手当」。社員の住宅費の補填、あるいは若手社員の雇用刺激などを目的として支給される手当で、各企業が給与規程に自由に定めています。住宅手当はもらったら得なのか損なのか、社員に説明するうえでのポイントを紹介します。

住宅手当とは

住宅手当は、基本給をはじめ家族手当や通勤手当などと同様に賃金体系に含まれるものですが、支給するか否かは各企業の自由となっています。支給する場合は、給与規程に支給目的、対象者、金額などを明示します。

支給の対象者の住まいが借家か持ち家かは問いません。持ち家の社員は、住宅ローンや固定資産税の負担があることから、支給している企業が多いようです。

住宅手当は給与の一部とみなされるため、所得税の課税対象になります。給与が増えるということは、住民税も増えることを意味します。住宅手当をもらう分だけ、納めるべき所得税・住民税は多くなるということです。このほか、社会保険料の算定にも影響するため、会社と社員双方の負担が増えてしまいます。

企業側からすれば、住宅手当を支給する代わりに賃貸物件を会社が借りて、社員に社宅として提供するほうが良いかもしれません。なぜなら、かかった費用を損金に計上できるため、社会保険料の負担を少なくすることができるからです。社宅だと社員も給料から天引きされるため、所得税や住民税が上がることはありません。

単に税金だけにスポットをあててみますと、住宅手当は社員にとっても企業にとっても、お得ではないという結論になります。

住宅手当のメリット

住宅手当のメリットはないのでしょうか。社員からすれば、所得税や住民税、社会保険料が上がるとしても、給与の一部として住宅費の補助が支給されるのはありがたいはずです。特に、持ち家の社員にとっては、住宅ローンや固定資産税の補填にまわすことができます。

自由に賃貸住宅を選べるというのも社員側のメリットです。会社指定の社宅に住むよりは、買い物に便利だったり、駅に近かったり、自分が重視したいポイントで賃貸住宅を選べるからです。

一方、企業側のメリットもあります。借上げ社宅に住んでいた社員が辞めてしまい、そのまま居住を希望されたときは、賃貸借契約を個人に変更する必要があるなど手続きが煩雑になります。小規模の企業ではあまり問題にならないかもしれませんが、会社の規模が大きくなると管理が大変です。ですが、社員が個人で賃貸借契約を結んでいれば、問題はありません。ワークライフバランスを重視する社員に説明する際にはアピールできるでしょう。基本給がまだ上がっていない若手社員にとって、業績にかかわらず固定して支給される住宅手当はとても魅力があるからです。