M&A
(写真=PIXTA)

M&Aを検討する時に、どうしても売却価格は気になるところだ。これまで努力した対価は高いと思う経営者も多いはずで、できるだけ高く売りたいというのが本音であろう。それでは、どうすれば売却価格が低くならないようにできるのであろうか。ここではM&Aにおいて売却価格を下げない方法を解説する。

より高く、を期待してはいけない

M&Aで高く売却したいと考えるとき、失敗してはならないのは時期と情報開示の2つである。

売却価格は、その時の株式市況や景気によっても左右される。そのため、譲渡時期を逸すると価格が大きく下がってしまうことがある。よくあるのは、高く売りたいがために売り惜しみをして交渉をストップするケース。他にも良い買い手があるかもしれない、もう少し景気が良くなればさらに高く売れるはずと考えてしまうのである。

確かに、今よりも景気が上向けばさらに高く売れることもあるかもしれない。しかし、将来など誰も確実には予測できない。売却ストップをかけることが、むしろ致命傷となることもある。売却できなくなることもありうる。経営者にとって許容できる範囲の売却価格であれば、機会を逃すことなく売却を決断すべきであろう。

次に、情報開示について。M&Aは会社の機密事項であるため、売却が決定するまでは経営者と一部の役員・部長クラスのみで動くのが一般的である。もし交渉中に従業員に売却の話が伝わった場合、動揺するであろう。場合によっては、優秀な従業員が辞めていくといった事態にもなりかねない。こうなると企業価値はマイナスとなり、買い手から売却価格を下げる要望がでる可能性がある。場合によってはM&A自体がとん挫するかもしれない。そのため、情報開示には慎重、機密を期すべきであるといえる。