バブル崩壊懸念、各機関が警鐘を鳴らす

この状況を受けて多くの機関が警鐘を鳴らしている。市場情報提供会社ブルームバーグは先月後半、中国の不動産市場にバブル崩壊の兆しがあるとして香港の調査会社のレポートを引用、「より喫緊なリスクは不動産バブル崩壊の恐れで経済が突然、大きく落ち込むこと」、「既にバブルになっている。投資家にとって重大な問題はこれがいつはじけるかである」と報じた。

米投資銀行ゴールドマン・サックスも10月初めの商品市場レポートで「政策主導の住宅ブームは単なる需要先食い。いずれ落ち込む」、「多くの勤労世帯にとって住宅は高嶺の花となり、これが続けば建設活動の低迷は長引く」とし、中国の不動産市場のリスクは高まり、少しでも落ち込むようであれば鉄鉱石や鉄鋼製品を中心に金属素材は厳しい局面を迎えると警告している。

これに呼応するかのように豪州政府は、中国住宅市場では「在庫は2016年前半にわずかに減少したが、供給過剰に変わりはない」、「建設活動の拡大はそう長く続かず、この分野で使われる物資は減少する方向」とし、同国の主要輸出品目である鉄鉱石の価格が来年は6%低下する恐れがあると懸念する。

このようなバブル懸念は国外にとどまらない。中国人民銀行(中央銀行)のエコノミストも不動産市場の「持続不能なバリュエーション」とその先行きに対し警鐘を鳴らし、「過度なバブル膨張に歯止めをかける方策が必要で、不動産セクターへの過剰融資を押さえ込む必要がある」と提言している。

2つのジレンマを抱える当局

当局も手をこまねいているわけではない。すでに購入促進策を転換、現在では20以上の都市で頭金比率や購入軒数の規制を強めている。しかしその有効性に対し、ゴールドマンは先のレポートで「地方政府がこの半年間とってきた規制策は市場の過熱をほとんど抑えられていない」と懐疑的だ。日本経済新聞も「規制をかいくぐるネット金融の普及で、効果が上がるかは未知数」と報じている(10月13日朝刊)。

中国政府が金融政策と政治の両面でジレンマを抱えていることも先行きに不安を投げかける。コメルツ銀行AGは最近のレポートで「インフレ沈静化が続き成長率が鈍化する中で、金融政策は全体として緩和的であるべきだが、資産バブルの懸念があるため、さらなる緩和の余地は限られている」と政策の舵取りの難しさを指摘する。

また政治面では、構造改革を重視する習近平主席派と、景気刺激策で高成長路線への回帰を求める「守旧派」が対立しているとされる。最近の中国景気は政府主導の不動産とインフラ投資の拡大策に支えられた片肺飛行だ。メーカーや金融機関の過剰設備・債務の整理に本気で取り組めば景気が再び下振れする恐れがある。

10月11日、李克強首相はマカオでの演説で7-9月の中国経済は予想よりも良いと述べた。また中国経済は統計が示すほど鈍化していないと主張するエコノミストもいる。中国政府がバブル抑制を優先して財政拡大で対応するのか、はたまた財政健全性重視でバブル膨張に目をつぶり成長を優先させるのか。さらには、構造改革を強力に推進して「ゾンビ企業」淘汰に走れば企業破綻が増え、信用不安が海外に飛び火する恐れもある。

中国の今後の景気動向と政策運営によっては世界経済に大きな影響が出るリスクがあることを投資家は意識しておく必要があるだろう。(シニアアナリスト 上杉光)

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