GoogleのAI子会社、Google Deep Mindが深層学習と外部記憶を組み合わせ、AI技術をより高度な水準に進化させることに成功した。
従来のAIの「状況判断が苦手」「応用力に欠ける」といった欠点を軽減する、実に画期的進歩である。新たなAIプログラムは自動的にロンドン地下鉄システムを学習しながら、最短経路を算出できるほか、家系図から家族構成を把握する能力なども備わっているという。
独コンピューター科学者「人間の脳にできて機械にできないことなどない」
注目を集めているAIだが、「状況判断が苦手」という点が最大の欠点として挙げられることが多い。人間の脳が様々な経験から学んだ常識に基づいて思考・判断するのに対し、AIは常識の基準を持たない。学習を通してデータを蓄積していくため、どうしても経験不足で常識知らずな面が目立つのは避けられない。チャットボットなどが突拍子もない返答をするのは、こうした学習期間や深度の差に起因する。
例えば「ジョンが校庭でボールを拾った。ボールは今どこにある」といった人間にとっては単純明快な質問が、AIには難題となる。ある人物がボールを拾えば当然ながらボールはその人物の手中にあるということは、人間にとっては常識だ。しかしAIにとっては未知の行動ということになる。
Google Deep Mindは「DQN(深層ネットワーク)」と呼ばれる独自のAIを開発し、そこに外部記憶を組みこむことで、AIの経験不足を軽減。外部記憶に重要な情報を一時的に保管し必要に応じて引きだせるため、人間の脳のように応用に活かせる。その結果、ロンドンの地下鉄の最短ルート算出や家系図による家族構成の把握のほか、ジョンとボールの例のような質問にも正しい回答を弾きだせるようになった。
独ブレーメン大学のコンピューター科学者、ハーバート・ジャガー氏は「人間の脳にできて機械にできないことなどないはずだ」と確信しており、十分な時間と開発費用が投じられれば「いずれAIが人間の脳を超過する日が訪れてもおかしくはない」という。
進化への期待が高まるとともに、これまで多くの著名科学者が繰り返してきた「人間がAIを開発したが最後、やがてAIが自ら進化を遂げるようになる」という恐ろしい警告が思いだされるのも事実だ。( FinTech online編集部 )
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