株式の配当とは、会社法において「剰余金の配当を受ける権利」(第105条第1項第1号)として規定される株主権の1つのことだ。広い意味で、預金や貸付金の利息と同じようなものと捉えている人もいるだろうが、両者は根本的に異なる性質を備えている。株式配当金とは何なのだろうか。

目次

  1. 株式配当金とは
  2. 配当金が支払われる時期
  3. 配当金と税金の関係
  4. 配当利回りとは?
  5. 配当金が高い企業の特徴

株式配当金とは

配当請求権は株主総会における議決権、会社清算時の残余財産分配権と並ぶ株主の最も基本的な権利だ。

配当請求権は株主総会決議として行使される(一般的に中間配当については会社法第545条第5項に基づき定款に取締役会が決定する旨を規定)。剰余金があれば自動的に配当される訳ではなく、多額の利益を上げても配当されないことがある。高成長率を見込める企業の場合は配当金を受け取り他の資産で運用するより、当該企業が設備投資や研究開発などに剰余金を充て、一層の事業拡大を図る方が投資効率の面で優れていると考えられるためだ。

株式配当金と債券利息は、投資に対するリターンという点では同じだが、両者の性質は全く異なる。民法第587条に基づく金銭消費貸借契約(一般的なお金の貸し借り)では、特約として利息を規定することが一般的だ。これに対し配当金は、上記のとおり剰余金額や成長余地などを踏まえ期末(および中間期末)ごとに決定される。つまり利息額は事前に(契約時に)定められているのに対し、配当金額は事後に(決算確定後に)決定するという違いがある。

配当金が支払われる時期

配当金は、定款の規定に従い決算期末と中間期末を基準日として、株主名簿に記載されている株主(および登録質権者)へ支払われる。上場企業では、決算報告を行う定時株主総会の開催は、決算期末から3か月以内とすることが定款に規定されている。これは金融商品取引法第24条だ1項において、国内企業は期末から3か月以内に有価証券報告書を提出することが義務付けられているためだ。したがって通常は期末から3か月程度後に配当金が支払われる(3月決算であれば6月から7月上旬)。

中間決算は第2四半期決算として行われる。金融商品取引法第24条の4の7第1項では、四半期報告書を各四半期末から45日以内に提出することを求めている。上場企業はそれまでに中間決算を承認する取締役会を開催するため、中間配当は決算期末の2か月程度後に支払われることが多い(9月決算であれば11月中)。

配当金と税金の関係

配当金に対する所得税などの課税方法には、3つのパターンがある。

1つ目は他の所得と合算して課税所得を算定する総合課税だ。この場合、一定の方法で計算した配当所得の控除が受けられる。

2つ目は申告分離課税だ。配当所得に対し20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+地方税5%)の税率が適用される。これを選択したときは、配当所得から株式取得ための借入金利息を控除できるほか、譲渡損益との通算もできる。高額所得者であれば総合課税より納税額が少なくなる可能性もある。

3つ目は確定申告を行わない方法だ。証券会社で特定口座を開設して譲渡所得の「源泉徴収あり」を選択すればよい。この場合、税率は申告分離課税と同じ20.315%が適用される。ただし借入金利息控除と譲渡損益の通算はできない。簡便な方法ではあるが、納税額を少しでも減らしたい人には向かない。

なお配当は一般的に利益剰余金を原資にして行うが、株主の払い込み資金の一部である資本剰余金を原資とすることもある。この場合は保有株式の一部を譲渡したものとみなされ、原則として配当所得ではなく譲渡所得として課税される。

配当利回りとは?

配当利回りとは、配当金を株式取得額(簿価)で除いたものである。以前は1株50円などの額面が決まっていたため配当金を額面で除した値を配当利回りとしていたが、今は無額面株式が一般的なためこうした算式になった。

複数銘柄を横並びで比較する場合は、直前期の配当金を時価で除して算出する。足元の配当金利回りの上位銘柄をみるとREITや金融関連銘柄が多く目につく。上位30銘柄は4%台後半から6%台後半の利回りだ。

今後も直前期と同程度の配当額(1株当たり)が見込めるとすれば、直ちにこれらの銘柄を買うと5%前後の利回りを確保できる。安定配当を行う傾向が強く、多額の増資を行う可能性が低い企業であれば、投資の検討に値するのではないだろうか。

配当金が高い企業の特徴

配当金が高い(配当性向が高い)企業には過去に蓄積した剰余金が豊富なものの、現在では有望な投資先を見出しにくいという特徴がある。市場占有率が高い事業を営んでいる場合、その事業に対する社会的ニーズが激減しない限り安定的に売上・利益を確保できる。そうした企業に第2、第3の柱となる事業を育成する能力や意欲が欠けていれば内部留保が年々積みあがるため、株主から配当として還元するよう圧力がかかる。

外国人投資家は経営陣に対し配当利回り(配当金額÷時価総額)や配当性向の目標設定を求める傾向が強いため、外国人株主の多い企業は配当金が多くなる傾向が窺われる。

また毎期安定的に配当することを前提とすれば、多額の設備投資や研究開発費を要さない小売業や飲食業の配当性向が相対的に高くなる。一方で、製造業は低めになると考えられる。