ユニクロなどを傘下にもつファーストリテイリング(ファストリ) <9983> の株価がここ数カ月堅調に推移している。

2015年8月期は史上最高値を更新したものの、2016年8月期は売り上げが減速、業績も低迷するなかで株価も下落傾向にあった。それが回復傾向にあるのはなぜか? ファストリに何が起こったのか? 背景を探ってみよう。

株式市場は「変化に敏感」 1年弱で59%もの値下がり

ヒートテック、ウルトラライトダウンなどのスーパーヒットで、ファストリの株価は2015年7月31日に史上最高値となる6万1970円をつけた。ユニクロの既存店売上は2014年8月期の1.9%増から2015年8月期には6.2%増と加速し、史上最高益を更新していたためだ。

ただ、好調だったユニクロの月次動向に変化がではじめた。2015年6月には既存店売上が11.7%減、7月には1.5%減と前年同期比を割り込み始めたのだ。市場関係者からは、価格引き上げが客足を遠ざけた可能性が高いとの指摘も聞かれる。

株式市場は変化に敏感だ。既存店の伸び悩みを背景に株価は昨年7月の史上最高値から下げトレンドに移行する。業績の下方修正なども相次ぎ、今年7月6日には2万5305円の安値を記録。1年弱で59%もの値下がりとなった。

たった1日で時価総額が5300億円も増加

だが、その安値をつけてから間もなく、同社の株価に変化が生じることになる。

7月14日、同社は第3四半期の決算を発表。2015年9月から2016年5月までの累計実績で見た営業利益は23%もの大幅な減少であった。また、通期の最終利益予想も1025億円から830億円に下方修正する内容である。そんな決算でありながら、翌日にはストップ高となる18%もの上昇を記録、たった1日で時価総額が5300億円も増加した。ファストリほどの大型株がストップ高をつけるのは非常に珍しいことだ。

ファストリに何が起こったのか? その理由は2つある。

一つは、低迷していた既存店売上が2016年8月期上期の1.9%減から、5月には5.9%増、6月4.5%増、7月18.1%増と上向き始めたことだ。これは待望のヒット商品エアリズムの寄与が大きいとみられる。

もう一つの理由は、営業利益の下方修正のトレンドが止まったことである。ファストリは2016年8月期の営業利益予想を期初に2000億円としていたが、第1四半期決算時に1800億円、第2四半期決算時に1200億円と連続して下方修正してきた。その下方修正のモメンタムが第3四半期で止まり、通期の営業利益予想を据え置いたのである。

同社は最終利益の下方修正について、為替損と2012年に買収した米国の高級デニム「Jブランド」の特損が主因としている。株式市場参加者は、表向きの最終利益の下方修正より、本業の回復を好感したのだろう。

実際、既存店売上も2016年8月期下期は4.9%増と上期の1.9%減から上向きに転じている。