「なぜ、お給料が上がらないの?」そんな悩みを抱えるサラリーマンやキャリアウーマンは多い。東京商工リサーチの調査によると、国内上場企業2218社の2016年3月期の平均年間給与は、前期比7万4000円増(1.2%上昇)の622万3000円だったという。2010年3月期に調査を始めて以来、6年連続の増加で、この6年間では44万8000円上昇したというが、多くの勤め人にとっては、「そんなにもらっていない」「うらやましい数字だ」というのが、実感ではないだろうか。
実は、こうした状況は先進国に共通のもの。数十年前なら、「技能や実力さえあれば、教育がなくても高い月給が期待できる」とされた米国の給与水準も、今では昔話だ。実際、日米の平均年収はどれくらい違い、どれくらい似ているのだろうか。職種別に見てみよう。
非専門職では大差がない日米年収
職種別の平均年収の日米比較の前に頭に入れておかなければならないのは、両国では職業の括り方、雇用条件や調査方法が違い、また為替レート変動によって実際のお金の価値の購買力と統計上の数字がかけ離れたりするため、単純比較はできないということだ。さらに、同じ職種でも勤務先が上場か非上場か、また労働者の人種や性別、最終学歴などによっても、平均値とは大きく年収が異なる場合がある。
以上を念頭に、日本のDODAエージェントサービスに登録した約22万人のデータを元に、正社員として就業している20~59歳までのビジネスパーソンの職種別平均年収(2015年7月現在)と、米国の給与調査会社ペイスケールが発表している職種別年収レンジ(2015年8月現在)を比較してみる。米国の数字は平均ではなく、中間値と高低のレンジで表される。為替レートは1ドル=105円で計算した。
日本では事務・アシスタント系(貿易事務)で367万円、同じく事務・アシスタント系(一般事務)で357万円であるのに対し、米国の事務・アシスタント系は246万円から506万円となっている。
また、販売・サービス系においては、日本のホール・サービススタッフが298万円であり、米国のホール・サービススタッフは83万円から372万円だ。
企画・管理系に目を移すと、日本の総務・庶務が490万円、米国のオフィスマネージャーは274万円から621万円である。
一方、専門職では、日本の営業系でMR(製薬会社の医薬情報担当者)が731万円、小売・外食では407万円に対し、米国の営業マネージャークラスの中間年収(平均ではない)が574万円、年収の幅は327万円から1117万円となっている。
ものづくり方面では、日本の製造技術・設備技術担当者(電気・電子・機械)が485万円、生産技術者(メディカル・化学・食品)が509万円であり、米国では製造技術者の中間年収が669万円、年収レンジが497万円から908万円と、やや高めだ。
インフォメーション・テクノロジー分野では、日本のITコンサルタントが630万円、研究開発者の平均年収が537万円だが、米国では中間年収がかなり高く、836万円だ。これは、米国がIT産業の世界的中心地であり、厚遇を受けていることによるものだろう。ちなみに、年収の幅は484万円から1340万円とされている。
繰り返すが、平均値(全データの合計をデータの個数で割った値)と中間値(データを大きさの順に並べ替えたとき、ちょうど順番が真ん中になる値)は性格が違うため、比較は難しい。平均年収を計算する場合、一部の勤め人が高給である場合、平均年収をつり上げてしまうこともあるが、そのような場合は中央値の方が実態をより正確に反映できる。
だが、米国の年収の下限と上限と中間値をあわせて考えると、おぼろげながら日米の共通点や相違点が見えてくる。両国では、非専門職の年収にさほど大差はないが、専門職の報酬はやや高めのようだ。