実質年収に重要なのは居住地の物価
違いも大きいものの、年収が伸び悩む点は、日米とも同じだ。米国では家計の年収が現在も2000年のレベルを下回っており、多くの米国人が世論調査に対して「経済はよくない」と回答する大きな要因になっている。米株価はイケイケ局面が持続し、米経済は2008年の金融危機以降、回復傾向が続くにもかかわらず、収入面では一向に回復が実感できないのだ。
それに拍車をかけるのが、日米両国における健康保険掛け金の値上がりなど社会保障の負担増、為替の動き(円安やドル安)による物価上昇、また日本においては消費増税など、給与が数パーセント上がったくらいでは、以前と比べて豊かさが感じられない。
米国勢調査局が10月はじめに発表したところによると、中間層あるいは中流階級の平均的年収を表す家計所得の実質中央値は、前年比5.2%上昇した。しかし、大半の勤め人がその値より低い年収しか得ておらず、日本と状況が似ている。
こうしたなか、注目されるのが、居住地による実質年収の違いだ。例えば、日本人観光客に人気のハワイ州ホノルル市は、商品の運送費がかさむことなどから、物価が全米平均より22.5%も高い。
ここで、米国で中流層と定義される年収4万2000ドル(441万円)の家庭を考えてみよう。生活費を調整すると、おもしろい傾向が見えてくる。ホノルルでは物価が高いため、実質4万2000ドルの収入レベルに達するには、5万1000ドル(536万円)も稼がなければならない。ハワイは、決して「楽園」ではない。
これに対し、物価が全米平均より17%安いミシシッピー州ジャクソン市では、実質4万2000ドルの収入レベルに達するためには、3万4600ドル(363万円)の収入があればよいことになる。(ミシシッピーが「楽園」ということではない)
つまり、実質収入は居住地の物価に大きく左右されるということであり、人生設計の重要なカギなのだ。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)