中央政党の支持率を「憤怒の政治」の数字で比較
レポートの最初のチャートで「憤怒の政治」が進展していることを数字で示している。主要先進国22カ国について、中央政党の支持率の低下を、1990年代平均や1990年代のピークと比較した。
1990年平均から大きく支持率を下げている国は、ギリシャ-49%、オーストリア-44%、オランダ-24%、ドイツ-20%、アイスランド-20%、スペイン-18%、フランス18%などEU参加国が目立っている。22カ国平均では-12%の下落だ。
逆に中央政党の支持率が上がっている国は、カナダ+10%、日本+7%、ノルウェー+6%、ニュージーランド+5%など4カ国のみ。日本以外は資源国だ。トランプ現象を引き起こしたアメリカは-7%。欧州ほど「憤怒の政治」は進んでいない。
マービン・バース氏が、主因として挙げているのは、中間層の収入停滞、収入格差拡大、特権階級と大衆の分離、政府・社会に対する信用失墜などだ。「憤怒の政治」は、ほとんどの国でリーマンショック前の2000年代初から始まっている。決してリーマンショックで流れが変わったわけではない。そして「憤怒の政治」度合いは近年特に加速してきている。
「憤怒の政治」が世界の成長を阻害する
マービン・バース氏は、グローバル化、移民問題、経済問題などは、市民が政治を判断する重要な要因ではあるがそれだけではないとしている。 国政レベルで有権者の意思が十分に反映されていない点や、EUや世界貿易機関(WTO)など超国家的組織の支持が減退していることが合わさって、欲求不満となって憤怒していると分析している。
バーグレイズは、「憤怒の政治」を脱グローバル化、保護主義化の流れとし、「緩やかな脱グローバル化であっても、世界のトレンド成長率を鈍化させる公算が大きい」と指摘した。
世界経済は停滞感が強くなってきている。世界貿易量は伸び悩みはじめた。「憤怒の政治」は、モノやサービス、労働力、資本の自由な移動に対する制限する動きである。戦後の世界経済は、自由化、グローバル化を背景として成長してきた。規制緩和が金融市場を発展させてきた。「憤怒の政治」は、今までの自由化、グローバル化と言った流れを止め、保護主義的な流れを引き戻している。「憤怒の政治」は、世界経済が持っていたポテンシャルの成長率を引き下げたのかもしれない。
こうした分析結果をだしているのはバークレイズだけではない。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチも10月のレポートで「世界各国が協力することに一層消極的となり、争うことをいとわなくなっている」と分析。「財政政策の緩和や保護貿易主義、富の再分配はインフレにつながる可能性がある」として、ヘッジとして金など実体経済資産を保有するようにすすめている。
日本は、この点では世界のトレンドと違う流れとなっているが、将来日本でも「憤怒の政治」が起きることがあるのだろうか。(ZUU online 編集部)