企業の決算発表が10月末にピークを迎えた。同日までに東証1部の3月期決算企業だけでも約500社が上期(4~9月)の業績を開示した。輸出企業を中心に円高の悪影響を受けてはいるものの、相対的に市場予想を上回るケースが多く、全体相場にもプラス要因となっている。一方、失望売りを招いた銘柄の中には過剰反応を示したとみられるものもあり、良好な買い場ととらえたい。
決算を受けて株価が調整する場合、大きく分けて二つの要因がある。まず、利益の水準が会社計画や市場の期待値を下回り、いわゆる「ネガティブサプライズ」となるケースだ。例えば日本ガイシ <5333> の場合、第2四半期(7~9月)の連結営業利益が151億円(前年同期比29%減)と市場予想(170億円前後)に届かず、決算発表後の10月31日は一時前日比で14%急落した。
一方、決算自体は及第点を確保した場合でも、それまでに大きく値上がりしている銘柄は「出尽くし売り」を浴びることがある。ファナック <6954> が31日に発表した7~9月の営業利益は365億円(前年同期比32%減)と減益ながらも市場予想(340億円前後)をクリア。通期計画も小幅に引き上げたが、1日は売り優勢となった。同社株は10月以降15%超上昇していた。
ただ、いずれにしても短期的な市場の判断が正確とは限らない。特に、決算発表の集中日に開示された業績は細かい点が見逃されがちだ。そこで、投資機会が生まれる。
10月25~31日に決算を発表した東証1部上場企業の中から、発表後と11月1日前場終値を比較して株価が5%以上下落しているものを対象に、配当利回り2%以上(市場予想含む)という条件を加えてスクリーニングを行った(表参照、右上の画像クリックで拡大)。なお、決算発表前に急騰・急落など不自然な動きをしていた銘柄は除外した。
リョービ、メックは押し目買い好機
これらの中には、今回の決算をきっかけに下降トレンドに入ってしまう銘柄も出てくるだろう。しかし、一方では比較的早期に新たな買いを呼び込み、値上がりするものもあるはずだ。
その一つとして期待できるのが、自動車向けダイカストのリョービ <5851> 。7~9月の連結営業利益が29億円(前年同期比20%減)と伸び悩んだことで、取引時間中の決算発表となった10月31日の株価は一時約1割下落した。
ただ、業績悪化には、英国子会社の生産混乱という特殊要因が影響している。ダイカストの需要自体は強く、この問題は今3月期下期(10月~来年3月)に好転するとみられ、中期成長の基盤は揺らいでいない。株価も早晩、来期業績拡大のシナリオを織り込む可能性が高い。
エフ・シー・シー <7296> 、電通国際情報サービス <4812> なども決算発表後の株価反応はやや過剰とみられる。いずれもチャートが崩れてしまった点は気掛かりだが、いったん下げ止まればそれなりの自律反発が見込まれる。また、メック <4971> の下落は健全な調整の範囲内。基調に陰りはなく、押し目買いの好機と判断したい。(11月2日株式新聞掲載記事)
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